喫煙者の息は子どもに影響ない?

喫煙者の息は子どもに影響ない?

私の義父は、ヘビースモーカーです。妊娠をきっかけに私のそばでは吸わないで頑張ってくれ、赤ちゃんを産んだあとも赤ちゃんのそばではタバコを吸わないようにしてくれています。
 しかし、タバコを吸った直後に、赤ちゃんに顔を近づけて息を吹きかけたり、タバコの臭いのついた手でさわったり抱いたりしています。そばで吸わなくても、匂いなどは赤ちゃんにとって影響があるのでしょうか?  とても心配なのですが、今まで本当に良くしてもらっているだけに、「タバコを吸った後に、赤ちゃんに近づかないでほしい」とはとてもいえません。主人は「そこまで神経質にならなくていいんじゃない?」といっていますが、本当に気にしすぎなくても大丈夫でしょうか?

専門家の回答

赤ちゃんの健康とおじいさまを思う気持ちのはざまで、真剣に心配されるママの心情が痛いほど伝わってきます。そこで「子どもをタバコから守る会」の代表世話人であり、幅広く禁煙活動を推進されている静岡県立こども病院の加治正行先生にお聞きしましたところ、次のようなお返事をいただきました。


静岡県立こども病院の加治正行先生より 
 ●「副流煙」と「呼出煙」
 「息がタバコくさい」ということは、“息の中にタバコ煙成分が含まれている”ことを意味しますので、“「タバコくさい呼気※」を吹きかけられる(吸わされる)こと=受動喫煙”と言えます。つまり、当然赤ちゃんの体には害があると考えられますが、残念ながら有害性を定量的に実証したデータはもっておりません。
 ※「呼気」とは、声を出したときの空気の流れのこと。
 
 たとえば、赤ちゃんのそばで誰かが喫煙した場合(一般的な意味での「受動喫煙」の場合)、赤ちゃんが吸わされるのは主にタバコの「副流煙※」ですが、「タバコくさい呼気」を吸わされることは、「主流煙※由来の呼出煙※による受動喫煙」と言えるのです。
 ※「副流煙」とは、タバコの先端から立ち昇る煙。
 ※「主流煙」とは、喫煙者本人が吸う煙。
 ※「呼出煙」とは、喫煙者がいったん吸い込んだ主流煙を吐き出した煙のこと。
 
 タバコの煙の中のさまざまな有害物質の量は、副流煙に比べると主流煙中には少ないため、一般的な受動喫煙に比べれば「呼出煙による受動喫煙」の害は軽いかもしれません。しかし、乳幼児にとっては無視できない害があると思います。
 
 喫煙者の呼気中の一酸化炭素濃度を測定すると15~30ppm※前後の人が多いのですが(非喫煙者では1~2ppm)、喫煙してから数時間経過して、呼気がタバコくさくなくなってもこれくらいの数値が出ます。ちなみに、先日外来でタバコくさいお父さんの呼気中の一酸化炭素濃度を測定させていただいたら、41ppmでした。
※「ppm」とは濃度を表す単位で“100万分の1”という意味。百分率表示では0.0001%。

厚生労働省が定めた環境基準では、オフィスや学校などの室内空気中の一酸化炭素濃度は10ppm以下とされていますので、喫煙者の呼気は(たとえタバコくさくなくても)それ自体が“環境基準を超えた人体に有害なガス”といえるのです。タバコくさい呼気なら、一酸化炭素濃度はもっと高いですし、その他の有害物質も含んでいますので明らかに有害です。

 ●赤ちゃんのために正しい情報を
 おじいさまにはこれらのことを理解していただいて(場合によっては呼気中の一酸化炭素濃度を測定してあげて)、「屋外で喫煙してさらに30分くらい深呼吸をし、せめて息がタバコくさくなくなってから赤ちゃんに近づいてください」と言ってあげてはいかがでしょうか。さらに「たとえ息がタバコくさくなくなっても、喫煙者の呼気 には環境基準を超えた高濃度の一酸化炭素が含まれているので、タバコを吸っている人が赤ちゃんに近づくと、赤ちゃんが酸素欠乏になってしまう」ということも教えてさしあげてはいかがでしょうか。
 赤ちゃんへの害をなくそうと思えば、結局おじいさまには禁煙していただくしかないと思います。かわいい赤ちゃんのためを思って正しい情報を提供してあげることは、決して喫煙者をないがしろにしていることにはならないと思います。これをきっかけにして、おじいさまが禁煙を決意してくだされば、万々歳ですね。
 

私もぜひおじいさまにはこのことを理解していただき、おじいさまご自身のためにもタバコとサヨナラをしていただきたいと思います。かわいいお孫さんがお話をできるようになって、「おじいちゃんの息クサイ」と言われないためにも。
 
  《加治正行先生関連サイト》
 ・こどもをタバコから守る会
 http://www.suzukinaika.com/kodomoHP/kodomo2001.html
 ・静岡県立こども病院 http://www.pref.shizuoka.jp/kenhuku/kf-14/"

※質問に対する答えはあくまでも「参考意見」としてお読みください。個人によって症状や対策は異なります。また、詳しくは診察してみないと判断できない場合もあります。
この記事の回答者
監修者プロファイル

監修者三石知左子(みついしちさこ)先生

東京女子医科大学母子総合医療センター講師などを経て、葛飾赤十字産院院長。
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