【助産師監修】妊娠28週~40週(妊娠後期)について

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監修者プロファイル

助産師松田玲子

医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

妊娠後期イメージ

 

妊娠後期に入ると出産まであともう少し。ここでは、妊娠後期の胎児の成長や母体の変化と症状について、そして起こりやすい異常や気を付けておきたことについて解説していきます。

 

 

 

妊娠後期とはどんな時期?

妊娠後期は妊娠28~40週に入るまでをさし、月数でいうと妊娠8~10カ月にあたります。なかでも妊娠10カ月は臨月と呼ばれており、いつ赤ちゃんが生まれてきてもいい状態です。

 

これまでゆるやかに成長してきた胎児も妊娠後期に入ると急激に大きくなるため、それに伴って母体にかかる負担も大きくなります。

腰痛やむくみ、こむら返りなどが起こりやすく、膀胱が押されて夜中でも頻繁に目が覚めるなど睡眠不足になりやすい時期です。

 

 

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妊娠後期の胎児の成長

妊娠8カ月(妊娠28~31週)の胎児の成長

・身長:約41㎝(31週の終わりごろ)
・体重:約1,600g(31週の終わりごろ)
・聴覚はほぼ完成し、音刺激によって胎児の心拍数が増加するようになる
・肺呼吸に向けた肺サーファクタントの産生が増加する
・目鼻立ちがハッキリしてくる

この頃になると、超音波エコーで胎児の表情の変化を観察できるようになります。

 

妊娠9カ月(妊娠32~35週)の胎児の成長

・身長:約45㎝(35週の終わりごろ)
・体重:約2,300g(35週の終わりごろ)
・皮下脂肪が増える、たらだが丸みを帯びてくる
・顔・お腹の産毛が消失
・肺機能がほぼ完成

 

妊娠10カ月(妊娠36~妊娠39週)の胎児の成長

・身長:約49㎝
・体重:約3,000g
・全ての器官が完成
・全身を覆っていた胎脂が減少する

紅色や赤みがかっていた皮膚は血色のいいピンク色に変化し、成熟児となるのがこの時期です。胎児自身も出産に向けて骨盤の方に下がってきます。

 

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妊娠後期の症状と母体の変化

妊娠8カ月(妊娠28~31週)の症状と母体の変化

妊娠期間の中で妊娠30週前後は最も羊水量が増える時期です。ピーク時には、800mlに達し、妊娠後期に入ると減少していきます。

また、母乳(乳汁)を分泌させる作用のあるプロラクチンというホルモンも妊娠後期に入ると増えはじめます。

 

妊娠9カ月(妊娠32~35週)の症状と母体の変化

胎児が大きくなるに従い、子宮はみぞおちの近くにまで大きくなってきています。そのため、胃が圧迫されて食欲減退、胃のむかつきなどの症状がでることもあります。

 

また、膀胱も圧迫されるためトイレに行く回数が増えたり、ちょっとした拍子に尿漏れを起こしたりしてしまうこともあります。これは妊娠後期に入った妊婦さんでよくみられるトラブルですが、骨盤底筋群を鍛えるストレッチをおこなうことで改善することが可能です。尿漏れ対策としてナプキンを当てておき、こまめに交換するなど、対処しておくと安心です。

 

循環血液量がもっとも増える時期のため、貧血になりやすくなります。たちくらみによる転倒などを避けるためにもゆっくり行動するようにしましょう。そして、鉄分やビタミンCを多く含む食事を摂るよう心がけましょう。

 

妊娠10カ月(妊娠36~39週)の症状と母体の変化

胎児が骨盤内に下がってくるため、恥骨や足の付け根に負担がかかり痛みが出ることがあります。子宮頸管も出産に向けてやわらかくなってきます。

個人差がありますが、おしるし(産徴)と呼ばれる出産の徴候がみられることもあります。そのほか、前駆陣痛や破水などの出産の徴候が現れることもあります。

破水したとき、または判断が難しい場合は、産院に連絡し指示を仰ぎましょう。

 

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妊娠後期に起こる可能性のある異常

・妊娠高血圧症候群

妊娠20週以降~分娩後12週までの間に高血圧、あるいは高血圧と蛋白尿を伴う場合、「妊娠性高血圧症候群」と診断されます。

全妊娠の約3~7%の割合で発症すると言われていますが、母児にさまざまな影響を及ぼす恐れがあるので注意が必要です。

 

 

・妊娠糖尿病

妊娠中によって軽度の糖代謝異常をきたすと、「妊娠糖尿病」と診断されます。家族に糖尿病の方がいる場合や、肥満・過度の体重増加、35歳以上の方で発症リスクが高くなるといわれています。妊娠糖尿病では、胎児が巨大児になるリスクがあるため食事療やインスリンの注射などによって治療がおこなわれます。

 

 

・胎児発育不全(FGR)

おなかの中の赤ちゃんの成長が妊娠週数に対して遅く、基準値を超えた場合、「胎児発育不全(FGR)」と診断されます。

初期の診断が胎児の染色体異常や先天奇形が原因なのに対し、中期以降は胎盤梗塞や前置胎盤、臍帯付着異常などが原因となっています。全妊娠のうち約8~10%の割合で発症します。

 

 

・切迫早産、早産

妊娠22~37週未満で早産のリスクが高くなると「切迫早産」と診断されます。

この時期は、胎外でも赤ちゃんが生存できる可能性はありますが、妊娠数週が長いほど生存率は高くなるため、妊娠を継続するための治療がおこなわれます。切迫早産と診断されたら、医師の指示に従いできる限り安静にすることが大切です。

切迫早産の原因には、子宮頸管無料症や羊膜絨毛膜炎(CAM)などがあげられます。

 

 

・前置胎盤
大量出血などが起こり、胎児だけではなく母体にも危険性が高いのが前置胎盤です。

妊娠後期になると入院管理をし、突然の出血にも対応できるような体制がとられることが多いです。

 


・常位胎盤早期剥離

分娩前に何らかの原因で胎盤が子宮壁からはがれてしまう状態です。発症直後は少量の出血の場合が多いですが、放置しておくと出血量が増え血圧低下や貧血により母体は危険な状態に陥ってしまうこともあります。常位胎盤早期剥離になるとおなかの中の赤ちゃんも危険な状態に陥る可能性が高いので緊急帝王切開となることもあります。全分娩において発生頻度は約0.5~1.3%となっています。

 

 

・前期破水

陣痛が来る前に破水してしまった場合を「前期破水」といいます。破水後は陣痛がきて出産に至るケースが多いので、妊娠37週未満に破水した場合、入院となり経過観察、あるいは出産となります。破水後は、感染のおそれもあるため、注意が必要です。

 

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妊娠後期に気を付けることは?

おなかが大きくなる妊娠後期は、妊娠中期の頃までに比べると足元が見えづらくなってきます。転んだりしないように、歩きやすい靴などをはくことをおすすめします。

 

また、出産に向けておなかが張りやすくなってくるのも特徴です。妊娠37週に入るまでは、切迫早産や早産にならないようにおなかの張りが強くなってきたら休息をとるようにしましょう。出血や規則的なおなかの張り、下腹部痛がある場合は、すぐに受診することが大切です。

 

また、臨月を迎えた後は飛行機の搭乗に医師の診断書や医師の同伴が必須などの条件がつくことがあります。遠方に里帰りを希望している場合は、このようなことも考えて帰省スケジュールをたてておきましょう。

 

仕事はいつまでできる?

希望すれば出産の前まで働くことが可能です。しかし、一般的には予定日の6週間前から産休をとって出産に備えることが多いようです。また、多胎妊娠の場合には予定日の14週前からの産休取得が可能です 。

 

産後8週間は、事業主は女性を働かせることができないと法律で定められています。

ただし、産後6週間を経過した時点で就労の希望があり、医師が問題ないと判断した場合には仕事に復帰することも可能です。

 

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まとめ

妊娠後期は、お腹が大きくなりこれまで以上に母体にも負担がかかるようになります。足のむくみやお腹の張り、トイレトラブルなどが多くなってくるため、疲れた時は無理せずに休息をとることが大切です。また入院にそなえ、準備もしっかりしておきましょう。

 

参考
・メディックメディア:病気がみえるvol.10 産科 第3版

・厚生労働省:労働基準法における母性保護規定

 

 

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