【医師監修】妊婦さんは温泉に入っても大丈夫? 妊娠中に温泉に入るときの注意点

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助産師松田玲子

医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

妊娠中に温泉に入るときの注意点イメージ

 

赤ちゃんが生まれる前に夫婦2人きりの時間を楽しもうと温泉旅行を考える人もいらっしゃるようですが、妊娠中は温泉に入れないと聞いたことがある人も多いのではないでしょうか? 実際のところ、妊娠中は制限があるのか、温泉に入ってもよい場合、気をつけることはあるのかなどを詳しく見ていきましょう。

 

 

妊娠中の温泉入浴は問題ない?

妊娠中の温泉入浴が自宅でのお風呂タイムと差異がほとんどないことから、妊婦さんが温泉に入っても問題ないと言われています。特に入ってはいけない時期などもありません。しかし、妊娠中の温泉がよくないと聞いた人が多いのも事実です。なぜ妊娠中に温泉に入ってはいけないと言われているのでしょうか。

 

●妊婦さんは温泉に入れないと言われている2つの理由

妊娠中(特に初期と末期)の温泉入浴がよくないと言われているのは、出血や流産、破水などのトラブルが心配されているためです。ただ、温泉に入ることが出血や流産、破水を誘発する原因になるという根拠はないとされています。

 

そして、これまで温泉法によって妊婦の温泉入浴が禁忌とされていたためです。環境省の依頼を受けて日本温泉気候物理医学会が調査した結果、妊娠中の温泉浴を禁忌としなければならない根拠が見つからず、2014年の温泉法が改定のタイミングで「妊娠中(特に初期と末期)の入浴は禁忌」の項目が削除されました。

 

現在は法改定によって妊娠中に温泉に入ることは禁忌とされていません。それでも、法改定されたことを知らないため、今もなお、妊娠中は温泉に入ってはいけないという認識でいる人が多いことも、妊婦さんが温泉に入れないと言われている理由の1つです。

 

 

妊婦さんが避けたほうがいい温泉はある?

妊娠中は妊娠していないときに比べると皮膚が敏感になりやすいです。もともと肌が敏感という人は刺激の強い温泉や、泉温が高い温泉は避けたほうが無難です。

 

●妊娠中に避けたほうがよい温泉の泉質
温泉は、温泉水に含まれる化学成分の種類と化学成分量によって10種類に分けることができます。

<温泉の種類>
① 肌への刺激が少ない「単純温泉」:岐阜県の下呂温泉など
② 日本の温泉の泉質で比較的多い「塩化物泉」:静岡県の熱海温泉など
③ 皮膚乾燥症などによいとされる「炭酸水素塩泉」:和歌山県の川湯温泉など
④ 飲むことで便秘解消が期待できる「硫酸塩泉」:群馬県の法師温泉など
⑤ 炭酸の泡がさわやかで心地よい「二酸化炭素泉」:大分県の長湯温泉など
⑥ 酸化で赤褐色の温泉水に変化する「含鉄泉」:兵庫県の有馬温泉など
⑦ 殺菌効果がある「酸性泉」:秋田県の玉川温泉など
⑧ 時間が経過すると黄色く変色する「含よう素泉」:千葉県の青堀温泉など
⑨ 卵の腐敗臭のような独特の臭いが特徴の「硫黄泉」:神奈川県箱根温泉郷の小涌谷温泉など
⑩ ごく微量の放射能を含む「放射能泉」:鳥取県の三朝温泉など

 

皮膚が普段以上に敏感になっている妊娠中は、塩分が主成分の②塩化物泉、硫黄が含まれる⑨硫黄泉、放射線を含む⑩放射能泉などの刺激が強い温泉は避けたほうがよいでしょう。

 

 

温泉に入る際に気を付けなければいけないこと

温泉入浴により、ストレスの発散や気分のリフレッシュが期待できますが、万が一のトラブルを避けるためにも、事前に注意点を理解しておくことが大切です。

 

●妊娠中における温泉入浴時の注意事項

1 湯温と入浴時間
42℃以上の湯温の温泉に10分以上入っていると、血圧の上昇を引き起こしてしまうことがあります。そのため、入浴前に湯温を確認し、入浴後は入浴時間が長くならないように気をつけることが大切です。

 

2 のぼせや湯疲れ
いつも以上にのぼせやすい妊娠中は、入浴前後にしっかりと水分補給をしましょう。また、温泉による効果を期待して何度も入浴すると、体に負担がかかってしまいます。温泉入浴は1日2回までを目安にしましょう。

 

3 入浴時の足元
妊娠中は、大きくなったおなかによって足元が見えづらくなります。段差などがないかよく確認して歩くことが大切です。岩場などの温泉は特につまずきやすいため、控えたほうがよいでしょう。

 

泉質によっては浴場が滑りやすくなっていることもあります。妊娠中に温泉を楽しむのであれば、ひとりでの入浴を避けるのがベストです。夫婦で温泉旅行に行くのであれば、温泉入浴をより安全に楽しめるよう、家族風呂などをうまく活用するのも1つの方法です。

 

 

温泉に入ることによる効果

妊娠中は普段の生活でも気にすることが多く、ストレスが溜まりやすいです。温泉には、そのような日ごろのストレスを発散する効果があります。適度な温泉入浴により、新陳代謝の亢進や軽度の血圧低下などの効果も期待できるため、注意事項を守って楽しめば、妊娠中でもリフレッシュできるでしょう。

 

 

まとめ

心身共にリラックスできる温泉。妊娠中でも基本的には入浴してもよいということです。出産前に温泉旅行を計画されるご家庭もあるかもしれませんが、その際にはかかりつけ医に必ず相談し、万全の準備を整えたうえで余裕を持った旅行を計画してくださいね。最近は、「マタニティプラン」のある宿も増えているため、妊婦さんへの理解のある宿をうまく選びつつ、温泉で日ごろの疲れを癒して、この先のマタニティライフをうまく乗り切りましょう。

 


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