【医師監修】妊娠中に風邪薬は飲める?

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師太田 篤之 先生
産婦人科 | おおたレディースクリニック院長

順天堂大学卒後、派遣病院勤務を経て、平成22年より順天堂静岡病院周産期センター准教授就任。退職後、平成24年8月より祖父の代から続いている「おおたレディースクリニック」院長に就任し現在に至る。

妊婦風邪薬イメージ

 

妊娠中は妊娠前と比べて免疫力が下がるため、風邪をひく妊婦さんは少なくありません。妊娠前と同じように、市販の風邪薬を飲みたいところですが、妊娠中に安易に薬を飲むことは、妊婦さん自身や赤ちゃんへの影響が心配されるため避けるべきことです。ここでは、妊娠中の風邪薬を飲むことへの影響や危険性、飲むことのできる薬の種類などについてお話ししたいと思います。

 

 

風邪によるお腹の赤ちゃんへのリスクは

風邪と言えば、倦怠感、発熱、頭痛、吐き気、食欲不振などの症状が挙げられますが、妊娠初期にもこのような症状が出る場合があります。妊娠すると、基礎体温は高温期のまま経過しますので、微熱の状態が続くことになり、ホルモンの変化によって風邪と似た症状が出ることがあります。妊娠していることに気付かず、風邪薬を飲んでしまうケースもありますので、妊娠の可能性がある女性は、薬を飲むことを控えておいたほうが安全です。

 

 

妊娠中に風邪薬を飲んでも良い?

市販の風邪薬を自己判断で飲むことは絶対に避けましょう。市販の風邪薬の中には、妊婦さん自身や赤ちゃんへの影響が心配されるものもあります。もし、風邪をひいた場合には、かかりつけの産婦人科を受診するか、内科で医師に妊娠していることを告げて診察・処方してもらうようにしましょう。医師が出した風邪薬は、妊婦さんや赤ちゃんへの影響が少ないものが選ばれますので安心して飲むことができます。
注意したいのが、家などに保管されている妊娠前に医師から処方された風邪薬です。風邪薬が残っていたのでとりあえず家にある薬を…とならないように注意しましょう。妊娠前と妊娠中では、飲むことのできる薬の種類が違ってきますので、きちんと妊娠中であることを考慮して処方された薬を飲むようにしましょう。

 

 

妊娠中に飲むことが出来る風邪薬はある?

妊娠中に薬を飲んでも、100%安全であるという薬はありません。妊娠中は、胃腸の動きが遅くなるため、薬の効き目が遅れたり、血液の量が増えていることや腎臓へ流れる血液の量も多いことで薬の血液中の濃度が低下します。そのため、薬の効き方や副作用の出方が妊娠前とでは異なることがあります。比較的、妊娠中の女性に利用されている薬を下記に挙げています。


■熱を下げる・痛みを止める薬
アセトアミノフェンが多く選ばれている薬になります。成分が胎盤を通過しますが、通常の量で、短期間使うことは安全です。長期間に大量に使った場合は、妊婦さんの肝障害・腎障害、新生児の腎障害の危険があります。また、妊娠後期に薬を飲むと、赤ちゃんの動脈管(子宮内での呼吸を維持するために必要)を縮めてしまい、命の危険を伴うため禁忌となっています。


■咳を鎮める薬
激しい咳が続くと、妊婦さんが辛いだけでなく、子宮収縮を起こして切迫早産の原因にもなりかねません。咳を鎮める薬として、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物が、妊娠中での安全性が報告されている薬になります。その他、ジメモルファンリン酸塩、ベンプロペリンリン酸塩、ペントキシベリンクエン酸塩などが使うことができます。


■細菌の増殖を抑えたり、殺す薬(抗生剤)
ウイルスによる風邪には抗生物質は効きません。しかし、気管支炎や肺炎が重症化する場合もあるため、ペニシリン系やセフェム系、マクロライド系、リンコマイシン系(添付文書には投与しないことが望ましいと記載)の抗生物質が処方されることがあります。これは、飲まないで起こる症状よりも飲んだ方がメリットとなる場合に選択されます。
抗生物質で注意したいのが、症状が和らいだからといって自己中断してはいけないということです。ぶりかえす恐れがあるほか、多剤耐性菌(多くの抗生物質に耐性を獲得した菌)を作ってしまいかねません。処方された日数をきちんと飲むようにしましょう。

 

 

まとめ

妊娠中に薬を飲むことには、妊婦さん自身や赤ちゃんの命に関わる危険性もあるため、細心の注意が必要になります。薬を飲む時期や量によっても悪影響を及ぼす薬がありますので、医師や薬剤師など、専門的な知識を持つ人が処方・調剤した薬を飲むようにしましょう。薬の効果は非常に複雑ですので、自己判断で市販薬を飲むことは避けましょう。


妊娠中は免疫力が低いため、風邪をひかないように予防することが重要になります。うがいや手洗いをすることが効果的ですが、うがいをする際はヨード含嗽薬(イソジンなどのうがい薬)を使うことは避けましょう。ヨードは簡単に胎盤を通過するため、赤ちゃんが甲状腺中毒となる恐れがあります。水でのうがいでも効果がありますので、外出後は必ず手洗いやうがいを行うようにしましょう。また、マスクを使うことも、感染の予防に効果的です。風邪などの感染症の予防を日ごろから行うようにしましょう。

 

 

 

 

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