【医師監修】妊婦さんは暑がり? どうして妊娠すると暑くなるの?

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師福岡 正恒 先生
産婦人科 | 産婦人科医

京都大学医学部卒。同大学院修了後、京都大学助手、講師を経て、平成11年より産科婦人科福岡医院院長。京都大学在職中は、婦人科病棟や産科病棟などを担当。またこの間、英国エジンバラ大学・生殖生物学研究所に留学。日本産科婦人科学会・産婦人科専門医、京都大学医学博士。

暑がり妊婦さんのイメージ

 

妊娠すると、周囲と体感温度に差を感じやすくなるのが一般的です。家族や友人が平然としているのに、自分だけが汗をかいて暑いと感じる状況が起こりえます。しかし、なぜそのような状態になるのかわからず、不安になることもあるでしょう。今回は妊婦さんが暑いと感じる理由を説明し、体調管理の注意点や暑さ対策のコツなども紹介します。

 

 

どうして妊婦さんは暑さを感じやすいの?

妊娠前の女性の体は、基礎体温が低くなる低温期と高くなる高温期を繰り返します。月経が始まってから排卵までは低温期になり、排卵によって高温期に入るというサイクルです。通常、高温期はおおよそ2週間ですが、妊娠した場合はそれ以降もしばらく高温期が続くことになります。暑いと感じる主な理由は、このような妊婦さん自身の体温の上昇です。ただし、上がり幅には個人差がありますし、それに対する感度も人によって異なります。風邪のように熱っぽいと感じる敏感な人も珍しくありません。

 

また、体の内部で起こる変化も影響しています。妊娠中の子宮は、胎児を保護するために内側の膜が厚くなっている状態です。この変化はプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンが大量に分泌されることによって起こります。この女性ホルモンは、子宮の内膜を厚くする役割以外にも、体温を上昇させる作用を持っているのです。それだけでなく、水分を蓄えさせようとする作用があることもポイントです。これが強く現れている間は、いつもより喉が渇きやすくなるため、さらに暑く感じてしまいます。

 

その他に、皮下脂肪の増加による影響も少なくありません。妊娠すると、衝撃から胎児を守るために母体の皮下脂肪が増えていきます。体温を維持することも皮下脂肪の重要な役割の一つです。そのため、熱が体内にこもりやすくなってしまいます。妊娠中は皮下脂肪の増加や胎児の成長により、体重が大幅に増えるのが一般的です。何をするにしても以前よりエネルギーをよく消費することになり、その分だけ熱も多く生じることになります。その熱が外部に逃げにくいので、暑いと感じる頻度も増えてしまうというわけです。
 

 

体調管理で注意すべきポイント! 冷やしすぎないように

暑さを我慢してストレスをため込んだり、体調を崩したりすることは、妊婦さんや胎児にとって良くありません。したがって、エアコンを利用するのは悪いことではありませんが、体温が下がりすぎないように注意しましょう。エアコンの設定温度を低くしすぎず、冷たい風が直接当たらないように風向を調整する必要があります。むやみに室温や体温を下げるのではなく、体感温度を低くすることが重要です。扇風機を併用したり除湿したりするなど、涼しいと感じやすい環境づくりを心がけましょう。

 

冷え性の妊婦さんは、さらに慎重に体調管理をしなければなりません。暑いからといって体を冷やすと、頭痛や腰痛などの困った症状が現れる恐れがあります。おなかの張りを引き起こすこともありますし、極端な場合は破水につながるようなケースもあるのです。したがって、エアコンを使うときは上記の工夫に加えて、自分の体の観察を怠ってはいけません。喉が渇いても、冷たいドリンクを飲み過ぎないようにしましょう。冷えすぎたと感じた場合は、入浴(足浴や下半身浴)で体を温めるという方法があります。

 

ただし、入浴も体温管理の観点から注意が必要です。こちらは逆に、体温を上げすぎないように意識しなければなりません。特に冬は、熱い湯船で体をしっかりと温めたくなる人が多いので要注意です。高温の湯船につかって体温が急激に上がると、脱水や交感神経の過剰な刺激という悪影響を引き起こしかねません。また、適温の湯船であっても、長時間つかっていると体温が上昇するので油断は禁物です。そのようなリスクを避けるため、10分以内を目安にして入るのが望ましいです。
 

 

暑がりの妊婦さんが夏を乗り越えるコツは?

妊婦さんにとって、夏は警戒しなければならないシーズンです。体温が上がっていて汗もかきやすいため、いつもより夏バテしやすい状態になっています。そうなると食欲が減ってしまい、暑さによる体力の消耗をカバーするのが難しくなるのです。自分だけでなく胎児に必要な栄養も不足しかねないので、まずはしっかりと食べて夏バテを防ぐことが先決です。

 

良質なタンパク質の摂取を心がけ、栄養価の高い食材を使った料理を献立の中心にしましょう。うなぎやレバー、豚肉などが夏バテの防止に効果的です。ただし、必ずしっかり火を通すことが大切です。また、きゅうりやトマトといった夏野菜は、足りない栄養を補給するのと同時に、体外に熱を逃がす働きもあります。

 

しっかりと睡眠をとることも、夏を乗り切るための重要なポイントです。早く就寝することを心がけ、翌日に疲れを持ち越さないようにする必要があります。とはいえ、暑くて寝苦しいと感じることも多いでしょう。寝るときの暑さ対策としては、寝室をエアコンで先に冷やしておくことが挙げられます。横になるタイミングで温度を上げて、寝付いた後に冷えすぎないようにすることが大切です。喉が渇いて目が覚めたときのために、枕元にペットボトルや水筒を用意しておきましょう。

 

日中に関しては、夏の強い日差しを避けることがポイントになります。たとえば、家にいるときは遮光カーテンを使ったり、直射日光が入ってこない場所で過ごすのが基本です。外出するときは日傘や帽子を使い、長袖やスカーフも着用すると良いでしょう。服の素材は、通気性の優れている麻や綿などが望ましいです。なるべく屋外にいる時間を短くして、涼しい場所で休憩をこまめに取りましょう。

 

 

単なる暑さでない場合も! 気を付けるべき症状とは

妊婦さんは暑いと感じやすいので、体温が上がっている状態に慣れてしまうことあります。しかし、病気で体温が上昇している可能性もあるので気を付けなければなりません。たとえば、子宮が大きくなるとその下の器官が圧迫されるため、腫れや炎症が起こりやすくなります。細菌が尿路を通じて腎臓に達することで起こる腎盂炎という病気もその一つです。体温が上がっているだけでなく、腰や背中に強い痛みがあるなら注意しましょう。嘔吐や排尿時の痛みを伴う場合も発症している恐れがあります。このような症状が見られたらすぐに医師に相談することが重要です。

 

また、単なる体温の上昇ではなく、熱中症にかかっているケースも見受けられます。軽い段階の症状としては、立ちくらみや筋肉痛などが代表的です。進行すると、頭痛や吐き気、虚脱感などが現れ始めます。さらにひどくなると、体温が高くなりすぎて酸欠になるような事態もありえます。酸欠が胎児にとって良くないのはもちろんですが、軽い段階であっても転倒の危険性があるので非常に危険です。少しでも熱中症の兆候が見られたら、日の当たらない場所で十分に水分を摂って涼みましょう。

 

【参考】
「熱中症~ご存じですか?予防・対処法~」環境省

 

 

まとめ

妊婦さんが暑がりになるのは不思議なことではありません。エアコンの温度に気を使うなど、しっかりと体調管理と暑さ対策をすれば、胎児に大きな負担をかけなくて済みます。ただし、気軽に構えずに、違和感のある症状が出ていないか常にチェックすることが大事です。健康な状態で出産を迎えられるように、妊娠中に感じる暑さに対して正しい認識を持ちましょう。

 

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