【医師監修】妊娠中の「入浴剤」の選び方と注意点

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師太田 篤之 先生
産婦人科 | おおたレディースクリニック院長

順天堂大学卒後、派遣病院勤務を経て、平成22年より順天堂静岡病院周産期センター准教授就任。退職後、平成24年8月より祖父の代から続いている「おおたレディースクリニック」院長に就任し現在に至る。

入浴中のイメージ

 

妊娠すると女性の心と体は一気に変化を始めます。今まで当たり前にしていたことでも、もしかしたら赤ちゃんに影響しないだろうかと、いちいち気にかかるものです。入浴剤は肌に直接触れるので、気にする人も多いことでしょう。妊娠中は入浴剤を使えるのかどうか、また入浴剤を選ぶ際の注意点についてわかりやすく紹介します。

 

入浴剤の種類と効果について

日本では、入浴剤を市販するには厚生労働省の承認が必須です。認可を受けられる成分は限られています。そのため、市販の入浴剤はメーカーにより主成分の配合の割合が多少違っていたり、プラスアルファとして香りや保湿剤が加わっていたりするものの、ベースはほぼ同じ成分が使われています。主要なものは4種類で、温熱や清浄効果を高める無機塩類、芯まで温める効果を高める生薬類、皮膚をきれいにして肌を整える酵素類、お湯のpH値を調整することで炭酸ガスを作り出す有機酸類です。これらの成分に肌の潤いを保つ油成分を含んだ保湿剤や、お湯の色合いを楽しむための着色剤が使われています。

 

入浴剤は配合される成分によって、無機塩類系、炭酸ガス系や生薬類系、酵素系に分けられ、複合したタイプのものも多く販売されています。生薬類系については薬用植物系とも呼ばれ、生薬を刻んだものと生薬エキスとほかの種類の成分を組み合わせたものがあります。夏場に好まれる清涼系のタイプは、無機塩類と炭酸ガスそれぞれの成分をあわせベースとしたところに冷感を感じられる清涼成分を足したものです。

 

妊娠中に入浴剤を使ってもいい?

まず妊娠中に入浴剤を使っても大丈夫なのか、気になるところです。入浴剤の製造販売をしている大手メーカーでは、自社製品について経過が順調な妊娠であれば使用してもよい、一般的には問題はないと案内しています。ただし、妊娠中は通常より肌や体調がデリケートになっているため、心配な場合はかかりつけの病院で医師に相談をするようにアドバイスが掲載されています。製品によっては効能の中に産前産後の冷え性に良いことや、目安として生後3カ月以降の赤ちゃんと一緒の入浴にも使用できるといった、成分の安全性や優しい処方である旨を紹介しているものもあります。

 

妊娠はママになりたかった女性にとってうれしいビッグニュースです。そして同時に、一日として同じ体調の日がないくらい日々どんどん体が変化していき、ママは女性の体の神秘を感じる時期でもあります。ママになっていくワクワクする時間、けれどもなかにはマイナートラブルに悩む人もいます。妊娠中のマイナートラブルとは、母子の生命にかかわるほど危険性はない体のあらゆる不調を指します。軽い不眠症や貧血、下肢のむくみによる不快感や疲れやすいこと、胃腸や便通の不調などが挙げられます。つわりにも嘔吐や吐き気を伴うもの以外にいろいろとタイプがあり、不眠とは反対の眠りつわりや、食欲がおさまらない食べづわりを経験するママも多いです。

 

実際にマイナートラブルに悩むママにとっては、とてもマイナーなどと言えるほど小さなトラブルではない状況もあることでしょう。妊娠性掻痒(そうよう)という妊娠期特有のじんましんのような、強いかゆみを伴う湿疹もそのひとつです。マイナートラブルは一時的であったり、妊娠中ずっとであったりと、人によって時期も長さも症状もさまざまです。妊娠により女性の体はホルモンのバランスが大きく変化します。妊娠期間を通して赤ちゃんを生み出す準備をするために、これまでとは違うホルモン状態になるのですから不調を感じるのも当然です。

 

このようなマイナートラブルに悩む時期にこそ、ママに必要なのはリラックスタイムです。心身がほぐされるような落ち着けるひとときは、ホルモン変化の影響で乱れがちな自律神経や、心のバランスを整えてくれるからです。入浴もリラックスする方法のひとつ。入浴時に気にかけるべき注意点はあるものの、なにより母体のリラックスは赤ちゃんにも伝わります。ゆったりと妊娠期を過ごすために入浴を工夫してみることは有効です。特に不眠やむくみ、血液循環など体の巡りの不調を感じている時期や、冷え、疲れやママの不安感を温かなお湯が癒してくれることでしょう。

 

妊婦さんが使っても安心な入浴剤とそのメリットは?

入浴剤を選ぶ際には、成分・効能の欄を必ず確認することが大切です。妊娠中のママが安心して使える入浴剤としては、穏やかに血行を良くするようなタイプや、香りが強すぎないものが良いです。入浴剤を用いるメリットは、ママの心と体を休ませる時間を作れること、そして体を効果的に温められることです。妊娠から出産、授乳期まで女性の体はたくさんの血液を必要とします。赤ちゃんをゆっくりと育むママのおなかの中も、十分な血液がないと赤ちゃんが心地良く過ごす環境を整えることができません。妊娠中以外でもそうですが、血の巡りの悪さや貧血からくる体の冷えは特に女性にとっては大敵です。

 

入浴剤はお湯のみの場合より血行を促進し、短い時間の入浴でも体の芯までしっかり温めてくれます。妊娠中は急な体調の変化に気を配る必要があるのと、妊娠前よりのぼせやすいため長湯は避けるほうが安全です。短時間でも体を温めることが可能な入浴剤は、妊娠中のそのようなニーズにも合っています。また、好みの香りを選ぶことで、ママはひと息つきながら自分だけの時間に浸りリフレッシュできるでしょう。肌荒れにも効くタイプを選べば、保湿や荒れ性の改善の助けとなり、肌がデリケートに傾きがちな妊娠期の肌トラブルの予防にも役立ちます。

 

妊婦さんが避けるべき入浴剤は?

本来はリラックスや体の機能を高めるためにメリットがある入浴剤も、妊娠中にはデメリットになってしまうケースもあると知っておきましょう。同じメーカー内でも製品によって効能や特長が違っており、妊娠期間にあまり向かないものもあります。アロマやゴージャスなバスタイムを楽しむような、香りに特化したラインナップは避けるようにしましょう。ほのかな香り、優しい香りであれば心地良く楽しめる範囲ですが、妊娠期は体が刺激に対し過敏に反応しやすい時期です。今までは大丈夫であった香りでも酔う可能性があります。念のため、香りなど刺激に関して製品の注意書きをよく確認するほうが無難です。

 

また、妊娠線や肌荒れの予防を考えると、保湿が妊娠中のママの肌には大切ではありますが、保湿に特化したタイプも避けたほうが安心です。妊娠中のママは転倒に十分に注意する必要があります。保湿力が高くしっとり感を強調したタイプの入浴剤は浴槽がぬるつく可能性があるため危険です。ほかには、発汗作用を謳うものも妊娠中は避けましょう。のぼせやすいことと、ママの体温が急激に上昇すると脱水症状を起こす場合があるためです。あとは夏場について、ひんやり感が好みの人は清涼タイプの入浴剤を使ってきたかもしれません。しかし、妊娠中のママの肌は今までよりもデリケートなので、清涼系は少し刺激が強いものです。思わぬ肌トラブルを避けるためにもやめておくほうが賢明です。

 

妊婦さんの入浴で注意すること

入浴剤の使用については妊娠の経過次第で、順調であればそれほど慎重になりすぎることはありません。むしろ母体が心地良ければ、赤ちゃんも心地良いのだと大らかに考えましょう。しかし、入浴については注意するべきことがあります。それは急な体調の変化があった場合を想定しておくことです。家族に告げてから入浴することや、ひとりであれば何かあったときにすぐ連絡ができるよう脱衣スペースやバスルーム近くの部屋に携帯電話などを置いておきましょう。水分補給で解消することもあるので、水分を手が届くところに用意しておくのも安心です。長湯をせず、ほどよくお湯に浸かったらあがるようにしましょう。

 

妊娠中はダイエットに向けたデトックスや美肌作りのためなど、美容目的での入浴は少しお休みをして、あくまでリフレッシュ、リラックスの範囲にとどめておきます。少しの時間でもお湯に浸かれば、疲れが和らぐことでしょう。無理をしないことが鉄則です。

 

まとめ

妊娠前は当たり前にできていたことが妊娠中は体調も変わりやすく自由にはできなくなるものです。また、おなかの中を気遣い、心配し過ぎてしまうママも多いです。お風呂がリラックスタイムだった女性は入浴剤のことも含め、これまでのようにして良いものか迷うこともあるでしょう。でも、ママが無理しない範囲でゆったり幸せ気分のときはおなかの赤ちゃんも心地良いもの。入浴剤の使用は体調と相談しながら、妊娠中のバスタイムを楽しみましょう。

 

<参考>

「入浴剤の成分と種類」日本浴用剤工業会

「身体への影響」日本浴用剤工業会

「入浴剤の成分と種類」日本浴用剤工業会

 

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