【医師監修】子宮筋腫の原因・症状・治療法と妊娠・出産に及ぼす影響について

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師天神尚子 先生
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長

日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

【医師監修】子宮筋腫の原因・症状・治療法と妊娠・出産に及ぼす影響について

 

子宮筋腫は、子宮にできる良性の腫瘍で、婦人科領域で最も多くみられる疾患です。30~40代の女性に多く、生殖年齢にある女性の20~30%にみられると言われています。子宮筋腫は良性の腫瘍ですが、大きくなるとさまざまな症状が現れるため、早めに診断・治療を受けることが大切です。ここでは、子宮筋腫の症状や原因、治療法などについてご紹介します。

 

 

子宮筋腫とは

子宮筋腫は、子宮の平滑筋に発生する良性の腫瘍で、女性ホルモンであるエストロゲンの影響を受け大きくなる、エストロゲン依存性疾患です。

 

子宮筋腫は主に以下のように分類されます。

 

●粘膜下筋腫
筋腫が子宮内膜直下に発生し、子宮腔内に向けて大きくなるもので、最も症状が強い。発生頻度は5~10%。

 

●筋層内筋腫
筋腫が子宮筋層内に発生し、大きくなるもの。発生頻度が約70%と最も多く、多発しやすい。

 

●漿膜下筋腫
筋腫が子宮漿膜の直下に発生し、大きくなるもの。無症状のことが多いが、茎捻転を起こすと急性腹症をきたす。発生頻度は10~20%。

 

このほかに子宮頚部筋腫と広靱帯内筋腫(広間膜筋腫)があります。

 

 

子宮筋腫の症状

子宮筋腫の約半数は無症状で経過しますが、主な症状は、過多月経、月経困難症、不妊です。子宮筋腫が増大することにより、周囲の臓器を圧迫することがあり、これによってさまざまな症状が出現することがあります。閉経後は女性ホルモンの影響が減るので、筋腫自体も小さくなり、症状も激減すると言われています。

 

●過多月経
月経時の出血量が異常に多く、レバー状の血液の塊が出ることがあります。過多月経の場合、過長月経(月経時の出血日数が8日以上にもの)を随伴することが多いです。そのため、鉄欠乏貧血となり、めまいや立ちくらみなどの症状が現れることがあります。貧血は徐々に進行することが多く、本人が気づかないこともあります。貧血が進行すると、心不全をきたす恐れもあります。

 

●月経困難症
月経直前または月経開始前とともに、下腹痛、腰痛、おなかの張り感、悪心、頭痛などが強く認められ、日常生活に支障をきたし、治療が必要になる病的症状です。

 

●不妊
子宮筋腫が着床を妨げることがあります。妊娠後も、流早産や胎児発育不全などのリスクがあります。

 

●圧迫症状
・腰痛
・便秘
・頻尿
・排尿障害
・水腎症

 

 

子宮筋腫の診断

内診と超音波検査をおこないます。ある程度の大きさの筋腫であれば、比較的容易に診断できると言われていますが、小さな子宮筋腫は発見が難しい場合があるようです。大きな筋腫を発見した場合や手術を検討する場合には、MRI検査をおこない、子宮筋腫がある場所や大きさをより細かく診ます。

 

また、MRI検査は子宮の悪性腫瘍である「子宮肉腫」との判別も目的としていますが、子宮筋腫と子宮肉腫の判別は難しいため、腫瘍の大きさや患者の年齢、大きくなるまでにかかった期間などを総合的に見て判断します。

 

 

子宮筋腫の治療法

子宮筋腫の治療は、過多月経による貧血の程度、症状、筋腫の大きさや位置、妊娠を希望しているかどうかによって異なります。

 

●経過観察
明らかに良性で症状がなく、妊娠の希望がない場合。ただし、3~6カ月ごとの健診が必要です。

 

●薬物療法(GnRHアゴニスト療法・偽閉経療法)
薬剤を使用し、脳下垂体の機能を抑制、卵巣からのエストロゲン産生を低下させることで、筋腫を縮小させる方法です。薬剤の副作用として、ほてり、のぼせ、抑うつ状態などの更年期様症状が出ることもあります。また、骨密度低下の副作用もあり連続の使用期間は6カ月と制限されており、治療を再開する場合も一定期間休薬が必要になります。

 

●手術
1)筋腫核出術
子宮筋腫のみを切除する方法で、特に妊娠を希望している場合におこなわれます。開腹して筋腫を核出する方法、開腹せずに筋腫を核出する方法(腟式、腹腔鏡下、子宮鏡を用いた方法)があります。現在では、腹腔鏡を用いた手術が主流です。

 

2)単純子宮全摘術
子宮頚部付近で支持靱帯を切断し、子宮を摘出する方法です。

 

●そのほかの治療法
1)FUS(MRガイド下集束超音波療法)
子宮に集束した超音波を照射し、筋腫を熱凝固する方法です。

 

2)UAE(子宮動脈塞栓術)
子宮筋腫に栄養を届けている血管を遮断し、筋腫を壊死・縮小させて、症状の緩和をはかる方法です。

 

 

子宮筋腫が妊娠・出産に及ぼす影響

現在、晩婚化・高齢妊娠の増加に伴い、子宮筋腫を合併した妊婦さんも増加傾向にあると言います。子宮筋腫があっても、妊娠・分娩経過にまったく影響しないケースもありますが、流早産、子宮内胎児死亡、胎児発育不全、子宮筋腫の変性による腹痛、分娩後の弛緩出血などを起こす可能性もあります。

 

子宮筋腫が妊娠・出産に及ぼす影響

・流産
・痛み(感染・変性)
・不正出血
・切迫早産、早産
・常位胎盤早期剥離
・前置胎盤
・胎児発育不全
・胎位異常
・前期破水
・産道通過障害
・微弱陣痛
・弛緩出血
・子宮復古不全


 

子宮筋腫合併妊娠の管理について

子宮筋腫合併妊娠については保存療法が原則です。妊娠中は、子宮筋腫の大きさの変化に注意し、痛みなどの症状がないかみていく必要があります。痛みが出現した場合、アセトアミノフェンの投与がおこなわれます。子宮筋腫の変性により、炎症所見が上昇したときは抗生剤の投与もおこなわれます。

 

自然分娩も可能ですが、子宮筋腫核出後の場合は帝王切開になります。なお、妊娠中の筋腫核出術は症状の改善がみられないような急性腹症を除いてはすすめられません。

 

まとめ

子宮筋腫は良性腫瘍で、無症状で経過することも多いため、放置してしまう方も少なくありません。また、生殖年齢にある女性に多くみられる疾患でもあるので、妊娠・出産にも影響を及ぼす可能性もあります。気になる症状がある場合は、早めに受診することをおすすめします。

 

 

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