【医師監修】妊娠とバセドウ病(甲状腺機能亢進症)とは?

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師天神尚子 先生
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長

日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

バセドウ病 妊娠イメージ

 

バセドウ病は性別に関係なく発症しますが、特に20~40代の女性に多い病気のため、妊娠と出産に影響を及ぼすことがあります。今回はバセドウ病合併妊娠について解説します。

 

 

バセドウ病とは? 

バセドウ病とは、甲状腺ホルモンが過剰に作られる甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)を起こす代表的な病気です。

 

甲状腺は喉仏より下の位置にあり、外見や外部から触れてもわかりません。甲状腺は脳下垂体から指令を受けて、全身の臓器に作用し新陳代謝を活発にするなど大切な働きをもつ甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺ホルモンが過剰に作られると、

 

・甲状腺が大きく腫れる

・脈拍が速くなる

・暑がりで汗をかきやすくなる

・指が震える

・体重が急激に減少する

・疲れやすくなる

・軟便や下痢を起こす

・眼球が飛び出しまぶたを閉じづらくなる

 

などの症状が起こります。発症する原因は不明なことが多いですが、強いストレスや過労によって悪化や再発しやすいとされています。

 

バセドウ病の治療は、甲状腺ホルモンを正常に保つことを目的に薬物療法・手術・放射性ヨード内用療法があります。病状に個人差があるため、どの治療法を選択するかは担当医と相談となります。

 

 

 

バセドウ病の女性が妊娠を希望するときに気をつけること

甲状腺の機能が安定していれば、バセドウ病と診断を受けた女性が妊娠しても、一般の妊婦さんと変わらない妊娠や出産、産後を過ごすことができます。


バセドウ病の治療中に妊娠することも状態によっては可能です。妊娠を希望する場合は、バセドウ病を診ている担当医へ妊娠のタイミングについて相談しましょう。また、妊娠初期から胎児への影響が少ない内服薬への変更が必要となる場合もありますので、妊娠が判明したら担当医へ相談しましょう。

 

 

バセドウ病合併時の妊娠中の対応について

妊娠初期は、胎盤から分泌されるhCGというホルモンが増加します。hCGには甲状腺刺激作用があるため、甲状腺ホルモンが軽度に増加し、バセドウ病が悪化したような症状が出ることがあります。これは一過性のものですが、症状が重い場合は内服以外の治療を開始しなければならない場合もあるので、担当医と相談しましょう。


妊娠中のバセドウ病の治療には、チアマゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)を内服する方法があります。ただし妊娠初期にチアマゾール(MMI)を内服した場合、赤ちゃんにへその緒や頭皮に異常が起こると指摘されているため、妊娠初期(特に妊娠4~7週)はチアマゾール(MMI)の内服は避けて、プロピルチオウラシル(PTU)に変更したほうがよいとされています。

 

妊娠中は、基本的に薬物療法をおこない、薬が効かない場合や副作用が強い場合のみ甲状腺の摘出手術を妊娠中期におこないます。放射性ヨード内容療法は、ヨードが胎盤から胎児へと移行し、胎児の甲状腺機能に影響するため妊娠中はおこないません。

 

またバセドウ病は、流・早産や死産、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群のリスクがあります。出血や下腹部痛、急激な体重の変化、胎動の減少(胎動が自覚できるようになった以降)などの症状があれば、次の妊婦健診を待たずに早めに産婦人科を受診しましょう。

 

 

バセドウ病合併時の出産について

バセドウ病を診る内科あるいは代謝・内分泌科、妊娠中から産後の経過を診る産婦人科、生まれた赤ちゃんを診る新生児科や小児科の連携は必要不可欠です。そのため、お母さんや胎児が早急に高度な医療を受けられように、規模の大きい病院へ転院をすすめられることもあります。


出産は、基本的に経腟分娩が可能ですが、リスクの低い妊婦さん同様、逆子や前置胎盤などの合併症がある場合は帝王切開となります。

 

 

バセドウ病合併時の産後について

母子共に経過が順調であれば、母乳育児をすることは可能です。治療薬のプロピルチオウラシル(PTU)の服用は母乳への移行が少ないため、授乳中はウラシル(PTU)の服用が望ましいとされています。しかし、チアマゾール(MMI)も授乳禁忌の薬ではないため、産後の内服については担当医と相談して決めましょう。


また、産後2カ月ほどは甲状腺機能が不安定になりやすく、症状が悪化しやすい時期です。抗甲状腺薬の内服が必要な場合は中断せず続けること、睡眠不足や疲労によるストレスをなるべく最小限にするために家族のサポートを得ることが大切です。家族内でのサポートが不足する場合は、居住地の保健所や保健センターへ相談して、産後に利用できるサービスを紹介してもらいましょう。

 

 

バセドウ病合併時の赤ちゃんへの影響について

バセドウ病合併のお母さんから生まれた赤ちゃんに影響があるのかどうかは、妊娠中にお母さんの甲状腺機能をコントロールできていたかどうかで異なります。

 

チアノーゼ、頻脈、呼吸が多い、汗が出ているなど甲状腺機能亢進を疑う症状があれば、治療が必要です。逆に、母親が飲んでいた薬剤の影響で一時的に甲状腺機能が低下するケースもあります。どちらの場合も、新生児科あるいは小児科で治療することで改善できます。

 

 

まとめ

バセドウ病と診断を受けても、治療を受けて甲状腺の機能が安定していれば、妊娠・出産・子育てをすることは可能です。妊娠中から産後まで、バセドウ病の悪化を防ぐために、治療については医師と相談して、周囲のサポートを得ながらストレスを最小限に過ごしましょう。

 

参考

産婦人科診療ガイドライン産科編2017

日本甲状腺学会

日本内分泌学会 バセドウ病とは?
 

 

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