私が契約していた駐輪スペースは「25番」でした。ところが、仕事から帰宅すると、その場所にはいつも赤い自転車が停まっていたのです。
赤い自転車の持ち主
最初は番号を間違えているだけかと思い、邪魔にならない場所へ移動させて自分の自転車を停めていました。
しかし、そんな日が何度も続いたある日のこと。私が赤い自転車を移動させていると、突然後ろから怒鳴り声が聞こえました。
「おい! 何勝手に触ってるんだ!」
振り返ると、見知らぬ男性が険しい顔でこちらへ歩いてきます。
「いつも俺の自転車を動かしてたの、お前か!」
私は驚きながらも、冷静に説明しました。
「ここ、私が契約している25番なんです。番号をお間違えではありませんか?」
ところが男性は、「関係ない! 昔からここは俺が使ってるんだ!」と聞く耳を持ちません。話が通じない様子に、不安しかありませんでした。
勝手に貼り替えられた契約シール
住人同士で揉めたくなかった私は、夫に話した上ですぐに管理会社へ相談。管理会社は事情を確認し、「駐輪ルールについて改めて注意喚起します」と対応してくれました。後日、駐輪場には張り紙が貼られ、全住民にも案内文が配布されました。
これで改善するかと夫婦で胸をなでおろしたのもつかの間、状況はむしろ悪化していったのです。
ある週末、自転車で出かけようとして駐輪場へ向かうと、私の自転車が敷地の隅へ移動させられていました。そして、25番にはまたあの赤い自転車が……。
さらに驚いたのは、私の自転車に貼っていた契約シールが剥がされ、その赤い自転車へ貼り替えられていたことでした。
その後も嫌がらせは続きました。自転車用のロックが壊されていたり、勝手に移動されていたりするのは日常茶飯事。「違法駐輪禁止」と手書きで書かれた紙が貼られていたこともあります。
さすがに恐怖を感じ、私は写真を撮って証拠を残すようになりました。
赤い自転車の男性の肩を持つ大家
ある日の夕方、いつものように自転車を停めようとしていたときのこと。突然、背後から怒鳴り声が聞こえました。
振り返ると、例の赤い自転車の男性と、見知らぬ年配の男性が立っていました。
年配の男性はいきなり私を指さし、「私はこのマンションの大家だ! 無断駐輪を繰り返しているのは君だと聞いている!」と責め始めたのです。
私は慌てて、「ここは私が契約している場所です。こちらの男性が無断で停めているんです」と説明しました。
しかし大家は、「ここは昔からこの人が使ってる場所なんだ! 暗黙のルールってものがある!」と言い出したのです。さらに、「従えないなら退去してもらうことになる」
とまで言われました。
あまりにも理不尽で、私は言葉を失いました。
私のピンチに駆けつけてくれたのは…?
何も言えないまま、一方的に責められ続けていた私。同じマンションの住人が連絡してくれたのか、しばらくして管理会社と警備会社の人が駆けつけてくれました。
私と男性2人、両方の話を聞いた管理会社の人はその場で契約内容を確認。そして、大家と赤い自転車の男性に対して、はっきりとこう言ってくれたのです。
「25番の契約者は、こちらの女性の方です。契約者以外が使用することはできません」
「契約番号以外の場所へ駐輪する行為もルール違反です」
それでも不満そうな男性2人。「ここは昔から彼が使っている場所で」「部外者にはわからない暗黙のルールってものがあるんだ」と繰り返していました。
すると、管理会社の人は「これ以上は当事者間での解決が困難なようですね」「今後は弁護士を入れて話し合いましょう」と言ったのです。
その言葉を聞いた瞬間、大家の男性は真っ青になりました。
悪事を目こぼしていた大家の末路
後から管理会社を通じて知ったのですが、赤い自転車の男性は大家の親戚だったそう。以前、金銭面で世話になったことがあり、大家は強く出られなかったとのことでした。
だからといって、他の住民に迷惑をかける行為を黙認していい理由にはなりません。しかも、防犯カメラには、赤い自転車の男性が私の自転車を移動させたり契約シールを剥がしたりする様子がしっかり映っていたようです。
私は管理会社と相談した上で、被害について警察へ相談。同時に、管理会社に別の物件を紹介してもらい、夫婦で引っ越しました。
大家はその後、管理会社を通じて私に何度も謝罪してきましたが、すでに信頼は失われていました。警察がほかの住民にも聞き込みをおこなったことで、この件は住民、そして近所の間でも噂に。瞬く間にそのマンションの空室は増えていったそうです。
ルールを軽視し、自分の都合だけを優先すると、結局は周囲からの信頼を失うのだと痛感した出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。