「失恋して暇だろ?w」
彼女と別れて数日後のことでした。昼休み、同僚のA男から何気なく、「そういえば最近、彼女とはどうなの?」と聞かれました。
僕は少し迷ったものの、「実は別れたんだ。彼女に振られて」と正直に答えました。するとA男は、「マジで振られたの?」「3年付き合ってそれはキツいなw」と面白がるように笑ったのです。
その日の夕方。就業時間が近づくと、A男は妙にソワソワし始めました。
「今日の懇親会、絶対行きたいんだよな~」
どうやら社内に気になっている女性がいるらしく、その女性も懇親会に参加する予定なのだそうです。
僕が自分の業務を一段落させ、残りの作業を進めていると、A男が突然「悪い、これ手伝ってくれない?」と声をかけてきました。
最初は少しだけのつもりでした。しかし気づけば、「こっちも頼む」「あとこれもお願い」と次々に仕事が増えていったのです。
そして最後には、「どうせ懇親会出ないんだろ?」「失恋したばっかりで家帰っても暇なんだからさw」と言い残し、懇親会へ向かってしまったのです。
正直、腹は立ちました。ですが、家に帰っても落ち込むだけだろうと思い、僕は黙々と仕事を続けることにしました。
残業中、彼女が現れて…
懇親会は社内の別フロアでおこなわれていました。僕がひとりで作業を続けていると、突然背後から「まだ仕事してたんですね」という声が……。
振り向くと、そこには別部署の女性社員が立っていました。仕事ができるうえに人当たりもよく、社内でも評判の女性です。
彼女は缶コーヒーを差し出しながら言いました。
「差し入れです。少し休憩しませんか?」
驚いた僕が、「懇親会はどうしたんですか?」と聞くと、彼女は少し困ったように笑いながら答えました。
「本当は最後までいるつもりだったんですけど……A男さんの話を聞いていたら、気になってしまって」
話を聞くと、懇親会の席でA男が僕の失恋話を笑いながら話していたそうです。
「ひとりで残業してるって聞いたので、様子を見にきました」。そう言われた瞬間、張りつめていた気持ちが少しだけ軽くなった気がしました。

少しずつ縮まった距離
その日をきっかけに、僕たちは話す機会が増えました。仕事の相談をしたり、一緒にランチへ行ったり。最初は何気ないやり取りでしたが、一緒にいる時間は少しずつ増えていきました。
そして数カ月後。仕事帰りに食事をした帰り道で、彼女が少し照れながら言いました。
「実は、前から気になっていたんです」
彼女によると、以前から僕の仕事ぶりや周囲への接し方を見て、好感を持ってくれていたのだそう。ただ、失恋した直後だったこともあり、すぐに気持ちを伝えるのは違うと思っていたとのことでした。
「もしよかったら、これからは同僚じゃなくて、もっと近い関係になれませんか?」
そう言われた瞬間、胸がいっぱいになりました。僕も彼女と過ごす時間が楽しく、もっと一緒にいたいと思っていたからです。もちろん返事はひとつでした。
こうして僕たちは、恋人として新しい関係をスタートさせたのです。
偶然A男と遭遇!すると…
交際が始まってしばらくしたある休日。彼女と食事をしていたところ、偶然A男と遭遇しました。僕たちが一緒にいるのを見たA男は、「え!?付き合ってるの?」と目を丸くしました。
そして、「俺、結構アプローチしてたじゃん」「なんで俺じゃなくてコイツなの?」と彼女に言いました。どうやらA男が懇親会に必死で参加しようとしていた理由は、彼女だったようです。
すると彼女は少しだけ僕のほうを見てから、A男に向かって言いました。
「だって○○さん(僕)は誠実な人だから」
「誰かが困っていたら自然に手を差し伸べるし、押し付けられた仕事も最後まで投げ出さないんです」
そして少し間を置いて、「私は、そういう人が好きなんです」と続けました。
A男は言葉を失ったように黙り込み、そのまま気まずそうに立ち去っていきました。
あの日は、失恋の傷が癒えないまま仕事まで押し付けられて、本当に最悪な日だと思っていました。でも今振り返ると、その出来事があったからこそ彼女と距離を縮めることができたのだと思います。
どんなときでも誠実に行動することは、決して無駄にならない――そんなことを教えられた出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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