相続と聞いても子育て世代には縁遠い感じもしますが、親や祖父母が急に亡くなって、相続の手続きや名義の変更など、あわててご相談をお受けすることも少なくありません。
「資産が多くないから関係ない」という方も多い一方で、平成26年の司法統計によると、相続について裁判所が調停等に関わったうち、全体の約32%が1000万円以下の遺産であったとのことでした。今回は、相続の基本についてご説明いたします。
相続は税金の手続きだけではない
相続とは、人が亡くなったときにその人の配偶者や子などが財産を受け継ぐことです。相続と聞くと、資産家が財産を子どもに相続するときにたくさん税金を払うことになるので、税理士と対策をするイメージを持つ人もいると思いますが、人が亡くなると、金額の大小の差はあってもすべての人に相続が発生します。
資産だけでなく、借金も相続の対象となりますので、親が多額の借金をして亡くなった場合は、子が借金を相続して返済をしなければなりません。なお、プラスの財産とマイナスの借金すべてを放棄(=相続放棄)すれば返済は不要です。
誰に財産を引き渡すかは法律か遺言で
誰が相続財産を受け継ぐかは民法という法律で決まっています。配偶者は常に相続財産を受け継ぐ権利があり、子どもがいる場合は子どもと、子どもがいない場合は父母や祖父母などの直系尊属と、子どもも直系尊属もいない場合には兄弟姉妹と、配偶者が分け合います。
相続する人が、配偶者だけの場合は配偶者100%、配偶者と子どもの場合は2分の1ずつ、配偶者と直系尊属の場合は配偶者3分の2・直系尊属3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1の割合で相続財産を引き継ぎます。
この法律で決まった対象者や割合(=法定相続)を変えたい場合は、生前に要件を満たした遺言を作成すれば、親が生存していても配偶者だけに相続させるというような相続も可能です。
平成27年から相続税の制度が変更
平成27年から相続税の制度が変わり、相続税がかかる基準が変わりました。今までは、基礎控除5000万円に法定相続人×1000万円までが非課税であったのに対し、基礎控除3000万円に法定相続人×600万円までに変更されました。
たとえば、配偶者と子ども2人が相続した場合は、以前は5000万円+3人×1000万円=8000万円までは相続税がかかりませんでしたが、現在では3000万円+3人×600万円=4800万円を超えた相続があった場合に相続税がかかることになります。自宅不動産と預貯金などで相続財産が、上記の基準を超え可能性がある場合は、事前にどのくらい相続税がかかるか、税理士や税務署などに確認するいいと思います。
今回は、相続の基本をお伝えいたしました。次回は、相続の準備に当たってできる対策についてご説明する予定です。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。