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【助産師監修】親子の絆を深め、死亡率を下げる「カンガルーケア」って何?!デメリットはあるの?

この記事では、助産師監修のもと、カンガルーケアについて解説します。カンガルーケアは、1990年代には世界保健機関(WHO)により、正常出産のガイドラインとして推奨されるようになりました。近年、日本でも広まりを見せている「カンガルーケア」ですが、赤ちゃんの健康にトラブルが出る例も多く、賛否両論の声が上がっています。今回は、カンガルーケアとはどんなものなのか、安全にカンガルーケアをするためのポイントについて紹介します。

この記事の監修者
監修者プロファイル

助産師松田玲子

医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
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カンガルーケアとは

カンガルーケアのイメージ

 

カンガルーケアは、母親と赤ちゃんが直接肌と肌の触れ合いをおこなうことで、親子の絆を深めるケアです。カンガルーケアは、1970年代に南米コロンビアの首都であるボゴタの病院で、スタッフや保育器の不足から起こる感染症の対策として取り入れられたのが始まりです。

 

その後、カンガルーケアは赤ちゃんの死亡率を下げることが明らかになり、世界に広がります。1990年代には世界保健機関(WHO)により、正常出産のガイドラインとして推奨されるようになりました。

 

日本では、赤ちゃんの命を助ける目的ではなく、NICU(新生児集中治療室)にいる赤ちゃんとの母子関係を改善することを目的に、カンガルーケアが取り入れられるようになりました。

 

現在では、集中治療をおこなっている赤ちゃんだけでなく、正期産である妊娠37週以上で生まれた赤ちゃんのケアとして取り入れられています。

 

※注:カンガルーケアはNICUにいる低出生体重児へのスキンシップを指すもので、正期産で生まれた赤ちゃんとおこなうママとのスキンシップは、正しくは「早期母子接触」と言います。しかし、記事内ではその認知の広さから、すべてカンガルーケアで統一しています。

 

カンガルーケアの効果は?(メリット)

親子のきずなを深めるとされるカンガルーケアには、対象の母子ごとによっても次のような効果や傾向があることがわかっています。

 

正期産で生まれた赤ちゃん

・母親の初めての授乳が成功しやすく、その後の赤ちゃんに母乳を与える期間が長くなる。乳房のトラブルが減少しやすい
・赤ちゃんの体温が保持され、呼吸や循環が安定しやすくなることで、赤ちゃんの泣く回数が減少しやすい
・出産後早期の親子のスキンシップがあることで、母子のきずなが深まりやすい

 

低体重で生まれた赤ちゃん

・母親が赤ちゃんとのつながりに満足を感じやすく、退院後の母乳育児の確率が高まる
・赤ちゃんが感染症にかかるリスクが減少する

 

※上記に挙げた例はあくまで統計に基づくものであり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。

 

 

カンガルーケアは危険ではないの?(デメリット)

カンガルーケアには、親子のきずなを深めるだけでなく、状況によっては母親と赤ちゃんの双方の健康状態によい効果をもたらすというメリットがあります。その一方で、適切な環境のなかでおこなわれないカンガルーケアでは、母子にとってデメリットが生じることもあります。

 

カンガルーケアにより懸念されるデメリットには、以下のものがあります。

 

カンガルーケア中に赤ちゃんの異常が起こることがある

生まれてきたばかりの赤ちゃんは、お母さんのおなかから外の世界へスムーズに順応する時期であり、不安定な時期です。そのため、元気で生まれてきた赤ちゃんでも、呼吸状態が変化するなどの異常が起きる場合があります。

 

医療機関のなかには分娩台に横になっている母親に赤ちゃんを渡すところもあり、赤ちゃんがうつ伏せの状態になりやすく、呼吸を妨げてしまう恐れがあります。

 

赤ちゃんの異常への対応が遅れることがある

どの状態の赤ちゃんでも、カンガルーケアをおこなうときは医療従事者が付き添っていることが望ましいとされています。しかし、病院の体制や出産した時間帯によっては、スタッフの不足により、医療従事者が不在のままカンガルーケアを経験することも少なくありません。このような状況では、赤ちゃんの異常が気づかれにくく、対応が遅れてしまう可能性があります。

 

母親がカンガルーケア中にストレスを感じる場合がある

初めての出産では、出産の疲労に加え、母親が赤ちゃんの扱いに慣れていないため、カンガルーケア中に母親がストレスを感じるケースも。また、低出生体重児の場合も、赤ちゃんの小ささにとまどったり、状態が悪化するのではないかという不安を感じる場合もあるようです。

 

カンガルーケア・ガイドラインについて

1990年代より、日本でもカンガルーケアが取り入れられるようになりましたが、当時はガイドラインのようなものはなく、それぞれの医療機関で試行錯誤をしている状態が続いていました。そのような背景の中で、実際の医療現場のスタッフ不足も重なり、カンガルーケア中に異常が起きた赤ちゃんへの対応の遅れが問題として挙がっています。

 

医療が発達している日本では、感染予防など、赤ちゃんの命を救うためのカンガルーケアは必要がありません。しかし、カンガルーケアが母子の相互によい効果をもたらすということから、有志の医療従事者を中心にカンガルーケアのガイドラインが作成されました。

 

なお、ガイドラインに定められた内容は、取り決めとしておこなわれるものではなく、赤ちゃんの誕生にかかわる人の意見を体系的にまとめたものとなっています。カンガルーケアに興味がある人は、一度目を通してみるのもよいでしょう。

 

カンガルーケアを希望するときの注意点

赤ちゃんとのカンガルーケアをおこなうには、安全におこなわれることが前提になります。カンガルーケアをおこなうときには、次のことを認識しておきましょう。

 

・カンガルーケアは母子のきずなや健康によい効果が認められている一方で、ケア中は赤ちゃんの健康に変化が現われる可能性があることを認識する。

 

・カンガルーケアをおこなう際には、医療従事者の付き添いがきちんとあるか、ケアにかかるおよその時間やケア内容を事前に確認する。

 

・カンガルーケア中は正しいポジショニングをおこない、赤ちゃんの呼吸や肌の色などの変化に気をつける。

 

・カンガルーケア中は手元にナースコールを置いてもらうなど、ケアを中断したいときや、赤ちゃんの異常が現われたときなど、スタッフを呼べるようにする(※1)。

 

※1:カンガルーケア中は、医療従事者の付き添いが望ましいとされていますが、現実問題としてスタッフがその場を離れることもあるため。

 

まとめ

カンガルーケアは、母子のきずなを深めるだけでなく、赤ちゃんの健康にもよい効果を与えるものです。その一方で、不十分な環境の中でカンガルーケアがおこなわれることで、赤ちゃんに影響を与えることもあります。カンガルーケアを希望するときには、出産予定の医療機関で、よく話し合いをするようにしましょう。

 

参考:

・ワーキンググループ「根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライン

・日本周産期・新生児医学会ほか「早期母子接触の留意点

 

 

 

 

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