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3児ママ小児科医がわが子に必ずインフルエンザ予防接種をする理由。異常行動から子どもを守るには?

東京衛生病院小児科の小児科医、私生活では7歳・5歳・4歳の子育て中という3児のママ小児科医保田典子先生のコラム。今回は保田先生が自身のお子さんにインフルエンザの予防接種をする理由、インフルエンザ脳症の症状と対策法などについて教えてもらいます。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師保田典子 先生
小児科 | 高円寺こどもクリニック院長

2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。3児の母。
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3児ママ小児科医がわが子に必ずインフルエンザ予防接種をする理由

 

こんにちは。東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。インフルエンザの流行期の今、「インフルエンザ脳症」について知っておいていただきたいことをお話したいと思います。

 

忘れられない「インフルエンザ脳症」の思い出

私は元々小児科医なのもあって、ワクチンはきちんと打つ派でしたが、以前体験したエピソードから、さらにワクチンの大切さを思い知った出来事があります。

 

それは、2歳の女の子で、インフルエンザ脳症になってしまった症例でした。インフルエンザ脳症になる前は飛んで跳ねて駆けまわっていたであろうその子は、病室で鼻からチューブを入れて栄養をとっていました。担当ではなかったため、その後、その子がどうなったか詳しいことはわからないのですが、その姿が衝撃的で、インフルエンザ脳症の恐ろしさを痛感したのでした。

 

インフルエンザ脳症について

インフルエンザ脳症は、日本では毎年60〜100人くらいが発症しています。多くは小児ですが、大人でも発症しています。インフルエンザの流行にともなって、インフルエンザ脳症の発症も増えます。

 

インフルエンザ脳症の症状

インフルエンザ脳症の症状は、発熱、意識障害がメインで、その他にけいれん、異常行動、嘔吐などがあります。0〜4歳ではけいれんが多く、5〜19歳では頭痛や嘔吐、成人では髄膜炎様症状になることが多いようです。死亡率が高いインフルエンザ合併症で、死亡率30%、後遺症率25%と言われています。

 

よく10歳以上で問題となりやすい異常行動ですが、どの年齢にも起こりえます。10歳以上だと行動力があるので、家から飛び降りたりできてしまう分、結果として痛ましい結果になることがあるため、注意を呼びかけられています。そして、異常行動とインフルエンザ脳症は区別しきれないのが実情で、異常行動が出たからといって必ずしもインフルエンザ脳症であるというわけではありません。

 

インフルエンザ脳症の異常行動、意識障害は一過性(1時間以内)ではなく、長く続くとされています。短時間の意識障害などは心配いらないことが多いのですが、再発して脳症となることもあるので、解熱するまでは気を抜かないで観察してあげることが重要です。

 

インフルエンザによる意識障害や異常行動は?

①両親がわからない、いない人がいると言う(人を正しく理解できない)
②自分の手を噛むなど、食べ物と食べ物でないものとを区別できない
③アニメのキャラクター、象、ライオンなどが見えるなど、幻視・幻覚的訴えをする
④意味不明な言葉を発する、ろれつがまわらない
⑤怯え、恐怖、恐怖感の訴え・表情
⑥急に怒り出す、泣き出す、大声で歌い出す
(インフルエンザ脳症患者家族の会「小さないのち」アンケート調査より)

 

この他にも、明らかにいつものお子さんと違うおかしい症状が出るので、見ればすぐにわかると思います。

 

異常行動を見たら

インフルエンザ自体は脳に影響を及ぼすことが多いので、インフルエンザ脳症ではなくても異常行動がでるお子さんはたくさんいます。30分くらいでおさまってしまう異常行動は様子を見ていても大丈夫ですが、不安であれば病院に相談してみましょう。#8000や救急外来をしている病院に電話相談をしてみることもできます。

 

看病のコツとしては、一般的な風邪の看病と同じで大丈夫ですが、

①異常行動が続かないか

②けいれんをしていないか

③脱水症状を起こしていないか

に気をつけましょう。

 

解熱剤や熱性けいれんの予防をしているお子さんは、予防薬などを使って大丈夫です(逆に、けいれん予防をしている子はしっかり予防薬を使いましょう)。

 

異常行動の対策、どうすればいい?

厚生労働省から、インフルエンザにかかったときの具体的な対策法が発表されています。

 

◆原則 ※これまでにも注意喚起を行っている内容

抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無によらず、インフルエンザと診断され治療が開始された後、少なくとも2日間は、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することを原則とする旨の説明に加え、次の注意喚起の例が考えられます。

 

◆小児・未成年者が住居外に飛び出ないための追加の対策(例)

(1) 高層階の住居においては、例えば、
・ 玄関及び全ての窓の施錠を確実に行うこと(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む。)、
・ ベランダに面していない部屋で療養を行わせること、
・窓に格子のある部屋がある場合はその部屋で療養を行わせること、等、小児・未成年者が容易に住居外に飛び出ない保護対策を講じることを医療関係者から患者及び保護者に説明すること

 

(2) 一戸建てに住んでいる場合は、例えば、

(1)の内容のほか、出来る限り1階で療養を行わせること

 

インフルエンザ脳症とインフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンは、接種しても発症してしまうことがあることから、あえて接種しないという方もいます。集団接種があった時期(1960〜70年代)よりも現在、ワクチンの接種率は下がっています。そのため、インフルエンザ脳症で死亡する小児や、インフルエンザにより死亡する高齢者が増えたというデータがあります。

 

多くのインフルエンザ脳症に関する論文を見てみると、インフルエンザ脳症になった症例で、インフルエンザワクチンを接種していた例はほとんどありませんでした。これが「インフルエンザワクチンを接種しよう!」と、いつも思っている理由です。

 

インフルエンザのワクチンは生後6カ月から接種でき、インフルエンザ脳症など重症の合併症の予防としてとても効果的です。インフルエンザ脳症になる確率は高くはありませんが、もしかしたら、自分の子がインフルエンザ脳症になってなってしまうかもしれない。確率は関係ないと思うからです。

 

 

死亡率30%、後遺症率25%と言われるインフルエンザ脳症。みなさんもどうか、お子さんにインフルエンザ脳症にならせないためにも、まずはインフルエンザワクチンをしっかりと接種し、お子さんを守ってあげてくださいね。

 

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