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子どもの「チック」育て方は関係するの!? 原因は? 治療方法はある?

この記事ではチックについて、医師監修のもと解説します。自分の意思とは関係なく、突発的に不規則な動きや発声を繰り返してしまうことをチックといいます。症状の始まりは2歳ごろ~高校生ごろまでの年齢とされていますが、小学校へ入学する前後が多いようです。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師松井 潔 先生
小児科 | 神奈川県立こども医療センター 産婦人科

愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等、同総合診療科部長を経て現在、同産婦人科にて非常勤。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医。
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子どもの気になるしぐさやクセを「チックかな?」と心配されるママやパパのために、今回はチックについてお話しします。

 

チックとは?

自分の意思とは関係なく、突発的に不規則な動きや発声を繰り返してしまうことをチックと言います。チックの症状には、運動チックと音声チックがあります。症状の始まりは2歳ごろ~高校生ごろまでの年齢とされていますが、小学校へ入学する前後が多いようです。2~3カ月で症状が消えるケースや、チックのパターンを変えながら数年続くケースがあります。完全に消えなかったとしても、大人になるとチックで困ることがなくなったり、軽くなったりする人がほとんどです。


下記のような動きを繰り返してしまうことを、「運動チック」と言います。運動チックには、1つの動きが起こる「単純運動チック」と体のいろいろな部分が一緒に動く「複雑運動チック」があります。

 

【単純運動チック】

・目をパチパチさせる(まばたき)
・口を開けたり曲げたりする(口をゆがめる)

・まぶたをギュッと閉じる
・鼻をヒクヒクさせる
・目を細める
・白目をむく
・肩をすくめる
・顔をしかめる
・首を振る

 

【複雑運動チック】
・人や物に触る
・においをかぐ
・たたく

 

下記のような声を繰り返してしまうことを、「音声チック」といいます。音声チックにも、「単純音声チック」と「複雑音声チック」があります。

 

【単純音声チック】
・咳や咳払いをする
・鼻をクンクン鳴らす
・「ア」「ウ」「オ」「ワ」など大きな声を出す
・ほえる、うなるなど

 

【複雑音声チック】
・他者の言ったことを繰り返して発声する
・人前や公の場で言うことをはばかれるような汚い言葉を言ってしまう
・自分の発した音声や単語を繰り返す

 

チックの原因は?

チックになるのは、子どものせいでも親のしつけや育て方のせいでもありません。チックになるのは遺伝も1つの要因として挙げられますが、親子で顔や体格が似るのと同じように脳の体質が似るというもので、おおげさにとらえる必要はありません。


チックがなぜ起こるのかは、まだ完全にはわかっていませんが、脳のドーパミンという神経伝達物質のアンバランスが関係していると言われています。そのことが土台にあって心の状態によってチック症状が引き出されます。
 

チックには、起こる前に動いたり声を出したりしないといられないムズムズする感じがあり、チックを起こすことですっきりする、落ち着くという特徴的な流れがあります。大人になっていくと、前頭葉が成長してチックが起こる前のムズムズする感じが起きてもチックを抑えられるようになると考えられています。

 

チックの診断と治療は?

チックは小児科などチックに詳しい医師が症状を観察して診断します。子ども本人がチックに困っている、チックだけでなくこだわりや落ち着きのなさに悩んでいる、子ども本人はチックに困っていなくても親が心配している場合は、受診して相談しましょう。
 

チックと診断がついた場合の基本的な治療は、本人と親、家族、その他日常的に関わる周囲の大人がチックについて正しい認識を持ち、チックの症状が起きても気にせず自然に消えていくのを待つことです。

 

チックは時期や日によって異なります。緊張する学校行事やイベントの前や、疲れや睡眠不足によって一時的にチックの出る頻度が増えることもあり、周囲が心配することもあるかもしれませんが、普段どおり自然に見守ってあげましょう。チックが起こったときは指摘したり、注意したりしないようにすることが大切です。
 

チックが日常生活に支障をきたして困る場合には、チックが落ち着くように作用する薬を使った治療をおこなうこともあります。

 

チックについて知ることで、子ども本人が自分のせいじゃないと安心でき、薬を飲まなくてもチックが目立たないようにコツをつかむこともあるので、病院では、それぞれの子どもに合わせた治療を子ども本人や親と相談しながら決めていきます。

 

トゥレット症候群とは?

チック症状があり、運動チックと音声チックの両方が1年以上続く場合を「トゥレット症候群」と言います。トゥレットとは、1885年フランスの神経科医ジル・ド・ラ・トゥレットが報告したことに由来しています。

 

トゥレット症候群によくみられる合併症(併発症)には、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害があります。また、こだわりや不安が強くなり日常生活に支障を来たす強迫性障害(OCD)、昼夜の区別に一致した生活リズムがとれない、睡眠障害などがみられます。トゥレット症候群の場合は、合併症に対する治療もおこなうことでチックを抑えられることもありますが、2つ以上の障害があると互いに症状を悪くすることがあります。

 

チックはチックの種類や経過期間によって分類されますが、原因が完全に解明されていないため、すべての患者さんに有効な治療方法が確立していません。チックはトゥレット症候群のように、発達障害や強迫性障害を合併していることもあるため、親がたくさんの情報を集めることもあると思いますが、病院で受ける治療から遠ざけるような助言や、「完治する」と断言する民間療法には惑わされないように気をつけましょう。

 

「チックかな?」と心配になったら

もし、わが子が「チックかな?」と思ったら、かかりつけの小児科へ受診して相談しましょう。病院に行くほどではないけれど相談したい場合は、居住地の保健所や保健センターの保健師へ相談することや、子ども家庭支援センターや児童館の相談窓口を利用することをおすすめします。

 

チックに対してあまり良いイメージが持てず、受診することや医師の診断を受けることをためらう保護者もいますが、子ども本人がチックに困っているのであれば、適切な治療を受けることでチックが良くなることもありますので、自分に自信を持てる環境を整えるためにも早めに専門家へ相談することをおすすめします。くれぐれもチックの症状が出たときに注意しないことが大切です。

 

まとめ

チックは脳内での神経発達の異常が原因であり、子どものせいでも、親のせいでもありません。ましてや子どもの「悪い性格(クセ)」でもありません。チックかもしれないと思ったら、症状自体にこだわらず、生活に緊張感や不安なことがないかを見てあげてください。それでもチックで悩むことや子ども自身が困っていることがあれば、小児科の医師や居住地の保健師、子ども家庭支援センターや児童館の相談窓口に相談してみましょう。そして、本人と親、家族、その他日常的に関わる周囲の大人がチックについて正しい認識をもち、チックの症状が起きても気にせず自然に消えていくのを待つことが大切です。

 

【参考】
国立成育医療研究センター「乳幼児健康診査身体診察マニュアル」

『乳幼児健診マニュアル 第5版』(医学書院)
一般社団法人日本小児神経学会HP
東大病院こころの発達診療部HP
NPO法人日本トゥレット協会HP
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターHP トゥレット症候群
心をはぐくむ子育てQ&A 全国情緒障害児短期治療施設協議会(P.24 チック)
『わかって私のハンディキャップ② トゥレット症候群 チックはわざとじゃないんだ』(大月書店)

 

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    著者プロファイル

    助産師古谷真紀

    一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

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