「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気。
おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。
私が出産を終えて退院してからも、引き続き入院していた息子。生後1カ月を迎えたころ、いつものようにお見舞いに行くと看護師さんから「一度赤ちゃんを抱っこしてみませんか?」と提案がありました。今回は、横隔膜ヘルニアで生まれてきた息子を初めて抱っこしたときのお話です。
人工呼吸器を気管から鼻へ
息子が生まれて1カ月経ち、呼吸の補助のレベルを下げることになりました。今まで口から気管に管を挿入し、人工呼吸器で呼吸を補助していたのですが、人工呼吸器で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り込むタイプに変更するとのこと。
それまでは気管に挿入した管が抜けたり、気管を傷つけたりしないように体の動きを制限する薬で眠らされていた息子ですが、鼻に取り付けるタイプならある程度動いても大丈夫になるという説明でした。息子の意識が戻ることに喜ぶ一方で、「呼吸の補助を下げると息子は苦しいのでは?」という不安もあり、私は複雑な気持ちでした。
抱っこしてみませんか
不安な気持ちをそのまま看護師さんに話すと、「確かに息子くんはまたしばらく頑張らなくちゃいけません。なので安定している今のうちに一度抱っこしてみませんか?」という意外な答えが返ってきました。
安定していると言っても、まだ人工呼吸器もついているし、点滴やドレーンなどたくさんの管に繋がれた状態の息子。「こんな状態で抱っこなんてできるの?……でもこのチャンスを逃したらまた当分抱っこできないかも」と思い、初めての抱っこをさせてもらうことにしました。
初めて感じた息子の重さ
看護師さん2人の補助にされるがまま息子を抱かせてもらうと、すべて身を委ねてくるその重みに胸が熱くなりました。息子は当時、胃に通したチューブから一応母乳を飲んではいましたが、肺への負担がかからないよう量は少なめで、さらに呼吸の負担が大きいこともあってほとんど体重が増えていませんでした。
しかし、私には不思議とたった2,940gの息子がとても重く感じたのです。人工呼吸器をつけながらも胸を動かし、温かい息子。「生きている赤ちゃんだ」。そんな当たり前のことを初めて感じられた瞬間でした。
息子が目を開けてくれた!
最初は管を抜いたりしてしまわないか不安で緊張していた私でしたが、だんだん慣れてきて頬を触ったり、名前を呼んだり、触れ合いを楽しめる余裕が出ました。すると息子が少しだけ、目を開けてくれたのです。
目が開いた瞬間を見たことはありましたが、それまでは何かを見るというのではなく、たまたま目が開いたという感じだったのに、そのときはしっかり目が合い、しばらく息子と見つめ合っていました。
息子はこのあと鼻の人工呼吸器に替わり、1週間ほどは厳しい状況が続きましたが、「初めての抱っこ」で息子の生命力をしっかり感じられたことで、息子を信じて見守ることができました。あのときの重さ、温かさは今でも忘れられません。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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監修/助産師REIKO
著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。