「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気。
おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までの出来事やママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。
先天性横隔膜ヘルニアにより、呼吸の補助が必要な状態で退院した息子。保護者へのケアも手厚かった入院中と違い、退院すると全部私たちの責任になってしまう気がして非常に不安でした。そんなとき、区役所より新生児訪問をしたいとの電話。医療的ケア児にも詳しい保健師さんがきてくれるとあって期待していたのですが、期待した支援は受けられませんでした……。
息子との暮らしに弱りきっていた私
息子が退院してからというもの、私は人工呼吸器の扱いや上の子がもらってくる病気の感染対策などに疲れきっていました。区役所から新生児訪問の連絡があったのもちょうど息子以外の家族全員が胃腸炎になったあとで、体調も芳しくなかった私は「とにかく助けてほしい。わが家だけでは見きれない」と訴えたのを覚えています。
看護師さんに気軽に相談できた入院中と違い、退院後は相談相手もおらず、いろいろと困っていても調べることもままならなかったので、保健師さんが家にきてくれるのは本当に待ち遠しかったです。
待ちに待った新生児訪問
新生児訪問では「人工呼吸器の移動時間に制限があるため、車を身障者用に停められる利用証が欲しい」「上の子や私たち両親が病気になったとき、息子に移らないようにどこかに預けたい」などさまざまな支援を保健師さんに訴えました。
医療的ケアそのものについては、人工呼吸器のメーカーや病院のサポートで十分だったので、自治体には息子へのケアを少しでも手伝ってもらって、私は上の子たちの心のケアをしたいという思いがありました。
医療的ケア児はつきっきりで育てる前提?
身障者用駐車場の利用証に関しては「今の息子さんの条件ではもらえない」、預け先に関しては「医療的ケア児を預かれる保育園はなくもないが、市で一時保育が利用できるのは1歳以上」という回答でした。
あとになって保育園以外の預かり先として、小児レスパイト入院(※)という選択肢があることを知りましたが、保健師さんからそういった情報の説明はありませんでした。
精神的に弱っていた私は「医療ケアが必要な赤ちゃんをもつ親はつきっきりでその子を優先して、出かけることも許されないのか」とがっかりしました。
(※)小児レスパイト入院:医療的ケアが必要な子どもの家族をサポートすることを目的とし、家族の一時的な外出や休息のほか、何らかの理由で養育ができない期間に医療的ケア児の短期入院を受け入れる制度。
欲しかったのは家族全体のケア
私が住んでいる自治体の支援は「医療的ケア児は親がつきっきりで見る」という前提であるように感じ、医療的ケア児の家族である私たちにとっては、あまり役に立ちませんでした。
特に上の子たちには、息子の入院中からたくさん寂しい思いや我慢をさせてしまっていたので、もっと「医療的ケア児の家族全体」に寄り添った支援が欲しかったなぁと思います。
新生児訪問に訪れた保健師さんは医療的ケアに詳しい方でしたが、そういった相談は直接こども病院にしていたので、残念ながら私たち家族にとってはあまり必要な支援がありませんでした。しかし、その後も保健師さんから定期的に電話などがあり、そのたびに「ひとりではないんだな」と思えたので、ありがたかったです。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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監修/助産師REIKO
著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院で農学を学んだ経験から食についても執筆。