生理期間中の経血量を人と比べる機会は、なかなかないですよね。しかし自分の経血量が多い・少ないを把握することで、体からの異常を知らせるサインに気づけるかもしれません。そもそも経血とは何なのか、どうやって経血量の多い・少ないを見分けたらいいのかなどを医師に聞きました。
答えてくれたのは…
こまがた医院院長 駒形依子(こまがたよりこ)先生
東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院入職後、再び東京女子医科大学に戻り、専門医を取得。同大学産婦人科に入局し産婦人科医として働きつつ、性科学を学び、また東京女子医科大学東洋医学研究所で東洋医学を学ぶ。2019年1月に地元山形県米沢市にて、こまがた医院を開業。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力~女医が教える「人には聞けない不調」の治し方(KADOKAWA)』。
経血って血じゃないの?
生理中に出る経血は、血液だけではありません。妊娠準備のために分厚くなった子宮内膜が、妊娠しなかったことで不要となり、子宮から剥がれ落ちます。その剥がれ落ちるときに子宮に傷がついて出血し、剥がれ落ちた子宮内膜と一緒に体外へ排出されたものが経血です。
1回の生理期間で出る経血の量の正常範囲は20~140ml。つまり、多くても約140mlと言われており、コーヒーカップ1杯分にもなりません。また、排出される子宮内膜は大体10~20gと言われています。
こう聞くと、案外少ないと思う人もいるかもしれませんね。しかし、そもそも子宮の大きさが鶏の卵1個分くらいなので、正常であればそこまで大量の子宮内膜は形成されないのです。
私の経血量、多い? 少ない? 見分け方は?
経血量は人と比べる機会がなかなかないのでわかりにくいですが、伝い漏れ以外で「ナプキンから漏れてしまう」「1~2時間ほどで交換しないと漏れてしまう」という人は多いと考えていいでしょう。本来なら、高吸収ポリマーなしの生理用ナプキンでも、3枚あれば間に合うくらいの量なのです。
逆に、生理中でもおりものシートで事足りるという人は経血量が少ないと考えていいでしょう。経血量が少ないということは排出される子宮内膜が少ないということ。体内に不要なものがある状態で過ごしている恐れがあり、その場合は、衛生面での危険性や感染症などのリスクが高まります。
生理のときに子宮が収縮するのは剥がれ落ちた子宮内膜と血液を一緒に体外へ押し出すポンプの役割をしています。経血量が圧倒的に少ない人は、子宮収縮のパワーが足りないのか、そもそも排出される総量が少ないのか、どちらにしても正常な状態とは言い難い状態です。「経血量が少ないから楽」と考えずに一度病院で相談することをおすすめします。
もっとはっきりと自分の経血量を計りたいという人は、使用前・使用後のナプキンの重さを計ることでおおよその量がわかります。しかし、衛生面での配慮や手間もかかるので、ナプキンを換える頻度や使用するナプキンの種類で判断してみてください。
なんで経血量に個人差が出るの?
経血として排出される子宮内膜は10~20g程度ですが、傷からの出血は傷の深さや子宮収縮のパワーによって変わってきます。
子宮の傷からの出血は静脈からも動脈からも出血しているのですが、傷が深いと動脈からの出血も当然増えます。傷が深ければ深いほど出血量は増え、止血にも時間がかかります。子宮の収縮は傷の止血のためでもあるので、出血が多い人の場合はその分、子宮収縮の回数が増えるので生理痛が重くなる傾向にあります。
傷が深くなる理由は明らかになってはいませんが、筋肉でできている子宮は、冷えて固まっていたり、乾燥して伸び縮みしにくくなっていたりすると、うまく動かすことができず、体外へ押し出すポンプの役割や、止血のために圧をかけるパワーをかけることができなくなっていることが考えられます。そのため、冷えや脱水を改善するだけでも、経血量を正常の範囲にできる可能性が高くなるのです。
経血量が多いことを過多月経、少ないことを過少月経と言いますが、どちらも体からの異常を知らせるサインです。人と比べる機会のない経血量ですが、生理についての正しい知識を身につけて、自分の体の状態を見極めるポイントの1つにできるといいですね。