こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子どもを子育て中の3児の母です。今日は、きょうだいが増えたときの上の子への接し方の問題です。子どもが増えたときに「上の子が可愛くない」と思ってしまったことはありませんか。こんなとき、どうするかお話をしたいと思います。
「上の子可愛くない症候群」とは?
「上の子可愛くない症候群」はきょうだいが生まれたあと、上の子が可愛く思えない、冷たい態度をとってしまうような状態のこと。もちろん、医学的にはこんな病気はありませんが、きょうだい児をもつ親御さんによくあります。
外来で診療をしていても時々「お兄ちゃん/お姉ちゃんが可愛くなくってしまって……」とお話しされるママがいらっしゃいます。
下の子よりも上の子にイライラしてしまうのはよくあることですが、「上の子が可愛くない」「そんなことを思ってしまう自分は母親失格」だと思ってしまう「上の子可愛くない症候群」は、家事も育児もしっかり頑張っている真面目なママが多いと感じます。
なぜ、上の子が可愛くないか、イライラしてしまうか
では、どうして「上の子が可愛くない」と思ってしまうのでしょうか?
それは、イライラしたり、怒るということは「自分の理想やあるべき姿よりも劣っている状態」だからです。
まだ生まれたばかりの赤ちゃんに「こうあるべき」とは思いませんよね? ギャン泣きして、「早く泣き止んでほしい」とは思っても、それがどうしようもないこともわかっているので、可愛くない、とまでは思わないことが多いです。
反面、お兄ちゃん、お姉ちゃんは年齢が上で「お兄ちゃんならひとりでお支度できる“べき”」「お姉ちゃんなら下の子の面倒をみてくれる“べき”」という気持ちが(ママが明確に思っていなくても)深層心理であるため、それに沿わない行動をされるとイライラしたり、可愛くないと思ってしまいます。
さらに、上の子(特に初めての子ども)だとママも初めての子育てで、「ちゃんとしなきゃ」と思いがち。その「ちゃんとしたお兄ちゃん/お姉ちゃんになってほしい」という気持ちが感情になって表れがちになってしまうのです。
「上の子可愛くない症候群」の乗り越えかた
①なぜ「可愛くない」と思うか整理してみる
まず、上の子に対してなぜ「可愛くない」と思ってしまうかを整理してみましょう。ワガママを言う、自分のことを自分でしない、下の子をいじめる……。「可愛くない」は、さきほども述べたように「こうあるべき」という想いが隠れています。上の子に対して「こうあるべき」と思っている自分を認めましょう。
②「こうあるべき」は本当に「こうあるべき」なのかを疑ってみる
例えば上の子が赤ちゃん返りをして、「こうあるべき」が崩れてしまっている場合、時が経てば解決することがほとんどです。少し待てばできるようになることなら、今ガミガミしてそれを改善すべきなのかな?と疑ってみてください。「別にちょっと待てば解決する“〜するべき”なら、待ってみようかな」と思えたら良い傾向です。
③気持ちは否定しなくてOK、対応を意識して
子どもが可愛くないって思ってもいいんです。ママだって人間ですし、内面から出てくる感情を否定はしなくてもいいんです。でも、可愛く思えないからといって、ママの養育態度が上の子に対して冷たすぎたりする場合、子どもの愛着障害などにつながったりもするので、注意が必要です。適度に話を聞いたり、スキンシップをとったりしましょう。
「可愛くない症候群」とは一時的なものです。“子どものため”と割り切って、可愛くないという気持ちは否定せずに、子どもへの対応は気をつけるようにしましょう。
子どもが可愛くない、という気持ちもママが頑張っている証拠
診療で相談にくるママたちも、真面目で頑張り屋さんの人ばかりでした。「可愛くない」という気持ちは、上の子の初めての子育て、初めてのきょうだい子育てを頑張っているために生まれるものであると感じています。ママが悪い訳ではありません。自分を責めずに「私、頑張っている!」とご自身を褒めてあげてくださいね。