テレビや新聞などでも報道されている内容ですが、2022年度から高校のカリキュラム(学習指導要領)が変わり、家庭科で「資産形成」についても学ぶことになりました。今までは、消費者の視点からカード破産やねずみ講などの経済活動において失敗をしないことが家計教育の中心の内容でしたが、2022年からはリスク管理も踏まえた家計管理や基本的な金融商品の特徴もカリキュラムに含まれるとのことです。
今回はカリキュラムにもある株式,債券,投資信託についてお伝えします。
高校の家庭科では何を教えるの?
2022年度の教科書はこれから作成されますので、詳細な内容はこれから決まる点もありますが、教科書や授業の前提となる学習指導要領を確認すると、「生涯を見通した生活における経済の管理や計画,リスク管理の考え方について理解を深め,情報の収集・整理が適切にできる」ために、(中略)「預貯金,民間保険,株式,債券,投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット,デメリット),資産形成の視点にも触れながら,生涯を見通した経済計画の重要性について理解できるようにする。」とあります。
その他にも家計管理やリスク管理にも触れるため、リスクを取って運用を積極的に促すというよりは、メリット・デメリットを確認し、ライフプランに応じて適切に活用することを中心に教えられる予定です。
株式、債券、投資信託とは?
高校家庭科の対象となる主な金融商品である株式、債券、投資信託ですが、一般の方でも売買できるものも少なくありません。それぞれの主な特徴は以下の通りです。
株式
株式とは、企業が事業に必要な資金を調達するために発行するものです。その株式を保有するということは、出資者となり、会社の共同オーナーの一人になることを意味します。日本には200万社を超える株式会社がありますが、証券会社で不特定多数の人が取引できる上場会社は2021年2月現在3,755社となっています。
会社の業績が良ければ配当金を受け取ったり、売却して値上がり益を得られる一方、業績が悪ければ株価が下がったり、配当金が出なかったりすることもあります。株価が何倍に上がる会社もあれば、企業が破綻して株式が無価値になってしまう可能性もゼロではありません。会社ごとに株価(株式の値段)が異なり、1万円以下で買えるものもあれば、100万円以上するものもあります。
債券
債券とは、投資家から資金を借りるために、国や地方自治体、企業等が発行する借用証書のことです。国が発行するものは国債、企業が発行するものは社債・事業債と呼ばれます。株式と異なり借入期間(満期)が決まっているものがほとんどで、満期まで当初設定されている利息を定期的に受け取ることができる利付債と利息はないものの、額面金額より安い値段で買い、満期がきたら額面金額の差額を上乗せしてお金が戻る割引債があります。
一般的には株式よりリスクが低いと思われることの多い債券ですが、発行体が外国や信用度の低い企業の場合は利率が高いことがある一方で元本や利息の支払いが滞ることがある可能性があることは覚えておきましょう。個人向け国債は最低1万円から購入できますが、社債や外国の国債などは数十万円から百万円単位での販売となることもあります。
投資信託
投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券、不動産などで運用する商品です。運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みです。
一般向けに販売している公募投資信託でも2021年1月現在、日本国内で約5900種類の取り扱いがあります。投資対象が低リスクの国内債券のものから、高リスクの新興国株式や通常の値動きより大きく動くレバレッジ型投信などのようなものもありますので、購入の際には値動きの幅や投資対象を確認することはとても大切です。証券会社によって最低購入金額が異なりますが、100円単位で購入できるケースもあります。
値動きのない運用商品はありません
いままで預貯金しか金融商品を利用していない人は、元本が保証されず、値動きがある運用商品を感覚的に理解できないこともあると思います。しかし、野菜やガソリン等の価格が日々変動することと同じように金融商品の価格も日々変動します。
程度の差は商品ごとによって異なりますが、金融商品は価格が上下するものが当たり前ということは覚えておきましょう。
なお、運用を始めるにあたっては、インターネットや書籍、新聞等で最低限の知識は入れておくようにしましょう。証券会社や銀行などで金融商品を勧められることもあると思いますが、即決せずに手数料や実績などをその他の商品などと比較して極端に性能が劣るようであれば避けた方が賢明です。また、周囲の人や情報に流されず、理解できないものや感覚的に合わないものは購入を控えたり、保有量を減らしたりすることが必要になることもあります。
高校の家庭科で運用商品を学ぶことだけなく、NISAやiDeCoなどの制度や運用商品の税制など、預貯金から資産運用へシフトする政策は以前から進められています。必ずしも使うものではないかもしれませんが、上手に活用することによって家計やライフプランにプラスになることが期待できます。
これを機に資産運用を考えるきっかけにしていただければと思います。なお、本稿は、特定の運用商品を推奨するものではありません。運用商品のご購入に際しましては、ご自身の判断と責任において行ってください。