こんにちは!助産師のREIKOです。ベビーカレンダーのニュース内で毎週2回配信されている、イラストレーターのやましたともこさんのマンガ「脱力系ゆる育児日記」、私も毎回楽しみにしています。
先日、配信された産科の実習生の話をつづった第130話と第144話をみて、思わずあるある~って思ってしまいました。今回は私が看護大学の教員をしていたころを思い出しつつ、看護学生の病院実習についてお話ししたいと思います。
看護師になるためには臨地実習が不可欠!
看護師になるには、高校の看護科に進学したり、高校卒業後に専門学校や大学に進学したりとさまざまなコースがあります。しかし、どのコースにも欠かすことができないのが、臨地実習と看護師国家試験です。臨地実習をクリアしないと必要な単位がもらえませんので、学校を卒業することはできず、もちろん看護師国家試験も受けることができません。
臨地実習というのは、学生が実際に病院や福祉施設などへ行って実践的な看護を学習する授業のことをいいます。臨地実習は期間は違えど各学年に設けられており、それまでの学習状況や達成目標に合わせておこなわれます。なかでも最終学年になると毎日がほぼ臨地実習となり、看護師になるという最終目標に向けて、いろいろな施設や病棟をまわっていきます。
最近では看護師を目指す男子も増えてきました。男性看護師が産科に就職することはありませんが、だからといって産科病棟での実習がなくなるというわけではありません。男子学生は女子学生とペアになって実習をしていきます。
産科病棟での実習はできればお産から!
産科病棟での実習では1組の母子を受け持ち、ママと赤ちゃんの日々の変化から2人に必要な看護はなにか考え、実践していかなければなりません。可能であれば、お産のときから退院するまでを受け持てるとよいのですが、なかなかそうもいきません。ですので、ほかのママと赤ちゃんを受け持ちながら、お産があるときに立ち会わせていただくということもあります。
学生がお産に立ち会わせていただく際には、ママの承諾をとらなくてはいけません。陣痛がまだ本格的ではない段階でお話ししていただくことがほとんどですが、やましたさんのマンガのような、分娩中のタイミングでお話しすることもたまにあります。二つ返事でOKしてくださる方もいらっしゃれば、もちろんNGという方もいらっしゃいますし、ご本人がOKでもご主人がNGで立ち会えないということも。
お産に立ち会うというのはなかなかできないことなので、なるべくたくさんの学生に立ち会わせたいのですが、そこはママの意向を優先し、最大3人まで立ち会わせていただいていました。ちなみに私が教員をしていた大学では、お産の立ち会いの際の学生の立ち位置はママの横か頭のあたりでしたよ。
はじめてのお産 そのとき学生は……
お産に立ち会っている学生は、時間とともに変化するママの様子に戸惑いをみせることもありますが、学生なりにママに対してできることを考え、病棟の助産師や教員の助言を受けながらかかわっていきます。腰をさすったり、汗を拭いたり、お産がすすむように足湯をしたり……本当に一生懸命です。
最初はママも看護学生も初対面のせいか、ぎこちない部分もありますが、最後はともにがんばる仲間のように。最後は赤ちゃんの誕生によろこび、安堵し、涙する学生も少なくありませんでした。そして、この貴重な体験をさせていただいたママと赤ちゃん、そしてご家族に感謝するとともに、自分の親にも感謝の気持ちが湧いてくるようで、お産に立ち会った日の夜、親御さんに連絡したという学生もたくさんいました。
病気ではないからこその大変さ
やはり産科病棟での実習はほかの実習とは異なる部分も多く、戸惑う学生も少なくありませんでした。ほかの病棟実習では、お風呂に入れない患者さんのからだを拭いたり、コミュニケーションの時間をとって患者さんとお話をしたりします。ですが、産後のママは大抵のことは自分でできますし、わざわざ時間をとって話をするのであればママを休ませてあげたいので「コミュニケーションの時間」は不要です。
そうなると「なにをしていいのかわからない」「やることがない」という学生も出てきます。どうしていいのかわからない→でもなにもしないわけにはいかない→受け持ちのママが起きていたら休息の邪魔にはならないだろうとお部屋に行く→話が続かない……。まさに、やましたさんのマンガに出てくるミホちゃんです。
教員はそのようなことがないよう、ケアの方向性やママとのかかわり方を助言していくのですが、病気ではないママと赤ちゃんを受け持つということは、やはり学生にとっては特殊で難しいようです。
小さな先生もがんばってくれます
産科病棟の実習ではママとのかかわりも大切ですが、赤ちゃんとのかかわりも大切です。やはり学生がおこなうとどうしても手際が悪く時間がかかってしまいますが、教員や病棟の助産師の指導のもと、検温や沐浴をしたり、ミルクを飲ませたりしていきます。
小さなからだで学生にたくさんのことを教えてくれる赤ちゃん。日々変化する赤ちゃんの様子を目の当たりにして、学生たちは学びを深めていました。とくに男子学生は赤ちゃんと接する時間が多いので、新生児室にいる赤ちゃんをとてもかわいがっていました。「ホント、ちっちゃな先生(赤ちゃん)に感謝しないとな!」という男子学生の言葉が印象に残っています。
産科病棟の実習をきっかけにその後の進路を決める学生もいます。私も実習をきっかけに助産師をめざした一人です。助産師にはなれないけれど、赤ちゃんのケアをしたいといってNICUに行くことを決めた男子学生もいました。もしお産で入院したときに、「もしよければ学生さんの受け持ちを……」とお願いされることがあるかもしれません。そんなときは1人でも学生を受け入れていただけたらうれしいなと思います。
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