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赤ちゃんの取り違え報道は他人ごとではない!?【助産師が解説】

先日、ある大学病院で約50年前に、生まれたばかりの赤ちゃんが取り違えられていた可能性がきわめて高いことがわかったとの報道がありました。この記事では、助産師のREIKOさんが新生児の取り違えについて解説します。

新生児室

 

こんにちは! 助産師のREIKOです。先日、ある大学病院で約50年前に、生まれたばかりの赤ちゃんが取り違えられていた可能性がきわめて高いことがわかったとの報道がありました。何年か前には、新生児の取り違えをテーマにした映画が話題になりましたね。そこで今回は、新生児の取り違えについてお話ししたいと思います。

 

約50年前のできごと

今回報道されたできごとについて、該当の大学のHPでは、今から約50年ほど前に生まれたお子さんについて、最近になって当事者の方と当事者のお母さまのDNA検査をおこなったところ、2人の間に親子関係が存在しないことが判明したとのことです。

 

そして、退院後に赤ちゃんの取り違えが発生することは考えにくいものと思われ、病院内で取り違えが発生した可能性が極めて高いと判断したとしています。また、もう一方の親子についてもある程度絞り込みもできているそうですが、50年以上経過したあとにこの事実をお知らせすることによって、現在の平穏な生活を乱し、取り返しのつかないことになるのではないかと考え、お知らせしないという判断をしたとのことです。

 

新生児の取り違えって実際にあることなの?

過去には新生児取り違えをテーマにした映画やドラマが数多く作成されてきましたが、そんなことが実際に起きるものなの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。新生児の取り違えを題材にした書籍『ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年』(文春文庫)を執筆したノンフィクション作家の奥野修司氏は、新生児の取り違え事件が頻発したのは第2次ベビーブームの1970年代だとしています。そして、日本全国で500件程度の取り違え事件が実際に起こっていたのだろうと推測されており、その数の中には、医療機関も、当人ですらまだ気が付いていない事例も含まれているといいます。

 

明確な数は明らかになっていないとはいえ、実際に裁判に至ったケースも見受けられます。よくあることではないけれど、ないとはいえないできごとでもあるといえるでしょう。
 

病院での対策は?

今回、新生児の取り違えが明らかになった大学のHPによると、当時の新生児の確認は、分娩後、へその緒は医師が切断し、助産師が新生児を沐浴室に連れていき、沐浴後に新生児の足裏に母親の名前を記すという方法がとられており、取り違えが発生したとすれば、新生児の足裏に母親の名前を記す前に起きたことなどが想定されるとしています。

 

以前は赤ちゃんの足の裏に油性ペンなどでママの名前を書いて、赤ちゃんを識別していたようですが、今は多くの産院がネームバンドで赤ちゃんを識別していると思います。そのネームバンドは、最初ママのネームバンドと一緒になっていて、赤ちゃんが生まれると切り離され、赤ちゃんの足首に装着されます。赤ちゃんとママのネームバンドには、同じ番号が記載されているんですよ。ですので、少し邪魔になってしまうかもしれませんが、双子ちゃんなどの多胎児のママは赤ちゃんの数だけネームバンドを手首にしていただいていました。

 

お産が重なったときなどは、周りもバタバタしますし、たくさんのスタッフが同時に動くので、新生児の取り違えが起こりやすい状況ともいえます。ですので、担当のスタッフは固定し、赤ちゃんの処置をおこなう台にも大きくママの名前を表記したり、その都度スタッフで声を出しながら確認をおこなって、間違いのないようにしていました。

 

また、赤ちゃんが生まれたとき以外にも、沐浴やミルクを飲ませたあとなど、赤ちゃんをコット(赤ちゃん用のキャリーベッド)に戻す際には、コットに入っている名前と赤ちゃんのネームバンドを確認してから戻すようにしていましたよ。

最近では、ママ、赤ちゃん、赤ちゃん用のベッドのタグをマッチングさせ、取り違えが起きるとLEDライトとアラームで警告するというシステムを導入している施設もあるようです。
 

ママにもできる対策がある

●名前をかならず確認して
ママである私が大事なわが子を間違えるはずがない!って思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、お産後のママは疲労がたまってしまったり、ホルモンバランスの変化も大きくなったりして、少しぼんやりしてしまうこともなきにしもあらず……。授乳室から帰るときに違うコットに赤ちゃんを寝かしてしまうというようなこともゼロではありません。必ずコットの名前を確認してくださいね。

 

●ネームバンドが取れたらすぐスタッフに声をかけて
ママと赤ちゃんのネームバンドは、一度装着するとかんたんには外れないような作りになっています。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんには、「生理的体重減少」というものがあり、生まれたときはピッタリだったネームバンドがするっと抜けてしまうことが多々あります。ネームバンドが外れてしまった場合は、スタッフが付け直すのでそのままにせず、スタッフに伝えてくださいね。

 

●赤ちゃんとたくさん触れ合って
赤ちゃんとたくさん触れ合って、わが子の特徴を探してみてください。泣き方、抱きごこち、顔や体の特徴など、ママにだけわかるポイントがあるはずです。パパやご家族と探してみてもいいですね。

 

●写真を撮っておいて
お産直後、ママと赤ちゃんのご対面の機会がありますが、状況によっては一瞬で終わってしまって、次に対面したときにこんな顔だったかしら……ということも。赤ちゃんの負担にならないということが大前提ではありますが、生まれたばかりの赤ちゃんの写真をご家族に残しておいてもらいましょう。

また、生まれたばかりの赤ちゃんは、ちょっぴりむくんだような顔をしていますが、日を追うごとに変化していきます。顔だけでなく、手足なども写真に残しておくといいと思いますよ。

 


今回のできごとで、あらためて気をつけなくてはいけないと思った助産師がたくさんいたと思います。時代背景も要因のひとつともいえるできごとですが、やはりあってはならないことです。人がかかわっている以上、起こりえるできごとでもありますが、やはりこうしたことが二度と起こらないような対策を講じることが大切だと思います。

 


医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

 

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      私も2022年第一子を出産時、取り違えにあいました。分娩台から降り、個室で待っていたところ、連れて来られたのは別の子でした。 その後、病院になぜそのような事が起きたのか尋ねましたが、単純なミスでした、… もっと見る
      私も2022年第一子を出産時、取り違えにあいました。分娩台から降り、個室で待っていたところ、連れて来られたのは別の子でした。
      その後、病院になぜそのような事が起きたのか尋ねましたが、単純なミスでした、ごめんなさい。のみ。今後も再発しないように努めるが、人為的な単純ミスのため、防ぎようが無いとのことでした。 詳細は割愛しますが、私にとっては一生の心の傷とトラウマになっています。
    • 通報
      それでもdna鑑定の義務化は止めておいた方がいいですよ。
      最近の調査だと、日本全体で3-4割が夫以外の子供らしいですし(連れ子を含みますが)
      日本社会全体が大混乱します。
      +7 -24

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