5月から6月にかけて、勤務先またはお住いの市区町村から通知が届く住民税ですが、内容や仕組みについてよくわからない人もいらっしゃると思います。今回は住民税の基本的な内容やよくある誤解について、お伝えしたいと思います。
1.正式には都道府県民税と市区町村民税を合わせた税金
一般的に“住民税”と呼ばれることが多いですが、正式には都道府県民税と市区町村民税を合わせた税金です。たとえば、東京都渋谷区に住んでいる人は“区・都民税”、大阪府大阪市に住んでいる人は“市・府民税”、広島県府中町に住んでいる人は“町・県民税”が課税されます。給与明細等にはこれらをまとめた“住民税”という名称が用いられることが多いです。
1月1日に住んでいる都道府県・市区町村に住民税を払う義務があるため、1月2日以降に引っ越しをしてもその年の住民税は1月1日に住んでいた市区町村から通知が届きます。そのため年初に引っ越しをした人は、以前住んでいた市区町村から通知が届いても今住んでいる市区町村とは関係ないと言って通知を無視することがないようにしましょう。
2.税率は基本的に全国一律
住民税についてよくある誤解の1つとして、「〇〇市は競輪場や競馬場があるので税金が安い」といった話や「△△市は福祉施設や病院が多いから税金が高い」といった話を耳にしたことがある人もいらっしゃると思います。しかし、住民税は地方税法という法律で定められているため、ほとんどの市区町村で住民税の税率は一律です。所得に応じた所得割は課税所得の10%に定額部分の均等割の5000円を加えたものです。
一部例外として、財政の厳しい自治体や環境目的で上記に割り増ししている自治体があったり、条例で税率を低くしている自治体もあったりしますが、税率が例外の自治体数はあまり多くありません。税率が気になる人はお住いの都道府県・市区町村のホームページや課税通知書等で内容を確認するといいと思います。
3.住民税は前年の所得に応じて課税される
住民税は所得税同様に、所得から医療費や扶養等の控除を差し引いた課税所得に税率を掛けて計算されます。しかし、所得税は年末調整または翌年2月~3月の確定申告で手続き・納税が完了しますが、住民税は上記にもあるように1月1日に住んでいる都道府県・市区町村に住民税を払う必要があるため、前年の所得を基準に6月から翌年5月までの納税額が決定されます。今年度(2019年)の住民税は、昨年(2018年)の1月から12月までの所得をベースに、今年(2019年)の6月から来年(2020年)の5月までの支払いとなります。そのため、5月から6月に掛けて住民税の通知が届くことになります。
妊娠や出産のために、昨年休職や退職された人でも、昨年中にお給料等で98万円または100万円を超えた場合には、今年度も住民税の通知が届く可能性があります。たとえば、月給20万円の人が6月末で退職した場合には、昨年中の年収は120万円になりますので、退職してから1年経過した今年度も住民税を納めることになります。逆に社会人1年目や職場復帰1年目で前年収入が低い場合には、住民税は課税されません。
その他、医療費控除や生命保険料・地震保険料等の所得控除は、確定申告で手続きすれば適用されることや、ふるさと納税の減税分の多くは住民税が対象となる点等も合わせて知っておくといいと思います。今年度の住民税の通知が届いたら、納める税金だけでなく所得や控除、税率等も合わせて確認する機会にしてください。