マイナス金利が日本で導入されて間もなく2年半になりますが、その一方で住宅ローンをそのままにしている人もいるのではないでしょうか。
「支払金額が下がるのは分かるけど、何をしたらよいか分からない」といった声もあり、家計相談でも相談項目に上げる人も少なくありません。住宅ローンは借り換えで金利が下がれば、月々の支払いが減りますが、その一方で手続きが煩雑であったり、手数料がかかったりとデメリットもあります。
今回は、借り換えを検討するにあたってのポイントをお伝えます。
1.現在の借入状況と借り換えの条件を比較しましょう
借り換えをする前提として、借り換えをすると現在よりメリットがある場合ですが、そのメリットがあるかを確認するには、現在の借入状況と借り換えの条件を比較する必要があります。借り換えの目安としては、以下の3つが該当する場合は借り換えをしたほうがメリットのある可能性が高いです。
【1】ローンの借入残高が1000万円以上
【2】ローンの借入期間が10年以上
【3】ローンの借入金利が現在のものより1%以上高い
そのため、現在の住宅ローン残高、残りの返済期間、現在と今後の金利は返済予定表などで確認する必要があります。また、借り換えの条件としては、借り換えの金利と手数料等の諸費用を確認する必要があります。
借り換えの例として、以下の条件の場合の借り換えをする場合と現在のローンを継続する場合の比較です。 こちらの例は金利差が0.66%しかありませんが、残高や返済期間が大きいので支払総額はだいぶ減少します。
借り換え例
借入時期:2013年(平成23年)6月
返済期間:35年
金利:2.03%(フラット35)
借入総額:3,000万円
1.現在のローンを継続した場合
(2013年6月時点フラット35最小金利)
①ローン残高:2,684.9万円
②利息支払総額 899.5万円
③団体信用生命保険(※1) 157.6万円
総支払額:3,742万円
月額支払:9万9,842円
2.2018年6月時点の金利で借り換えした場合
1.37%(2018年6月時点フラット35最小金利)
①ローン残高 2,684.9万円
②利息支払総額 591.0万円
③諸費用(※2) 81万円
総支払額:3,356万円(386万円減)
月額支払:9万994円(8,848円減)
※1 2017年9月までのフラット35の団体信用生命保険は、保険料の支払いが必要のため総額に含みます。
※2 印紙税、事務手数料、登記費用等の総額で、一律ではありません。概算を総額に含んで試算しました。
2.手数料や借り換え条件は一律ではありません
借り換えの主なデメリットは、手続きが煩雑な点と手数料がかかる点です。手続きとしては、住宅購入時と同様勤務先や年収の確認や現在の物件状況、生命保険加入のための健康状態、そのほかの借入状況など多岐に及びます。
また、現在の借入先から次の借入先に抵当権の設定(登記の再設定)が必要となり、金融機関や司法書士事務所等に複数回(ネットバンクでも1~2回)は訪問が必要となります。少なくとも書類の準備から借り換え実行まで1カ月以上かかりますので、お時間がある程度必要となります。
また、物件の経年劣化やそのほかの借入が増えることによって、借り換えの金利や金額が希望通りいかないケースがあります。健康状態の悪化による生命保険の加入ができないことによる金利上昇や手続き不可になることもゼロではありません。金融機関に支払う手数料も一律ではなく、“借入金額×〇%”、“ローン件数につき〇万円”等、いくつかのパターンがありますので、金利と合わせて手数料や諸経費の確認も必要です。
ここまで書くと面倒にも思えますが、これを乗り切ればトータルで100万円を超える支払い削減ができる可能性もあります。こちらの記事で住宅ローンが気になった人はまずは現在の残高、金利、返済期間を確認するところから始めてみましょう。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。