緊急帝王切開とは!? 妊娠や出産はいつ何が起こるかわからない?

2018/12/06 19:00
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この記事では緊急帝王切開について、医師監修のもと解説します。緊急帝王切開とは、お母さんやおなかの赤ちゃんの健康状態が悪くなり、このままではお母さんと赤ちゃんともに障害が発生する可能性が考えられる、もしくは経腟分娩では分娩が難しいと判断されるときに行われる分娩方法です。経腟分娩と違い、おなかを切って赤ちゃんを取り出すことになります。
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緊急帝王切開のイメージ

 

帝王切開術(以下帝王切開)には、出産する前から帝王切開で分娩することが決まっている予定帝王切開とお母さんもしくはおなかの赤ちゃんの健康状態や分娩の進行に問題が起きたために分娩となる、緊急帝王切開があります。経膣分娩で出産予定だった方は、急に帝王切開が決まると不安が大きいですよね。出産前に緊急帝王切開になることも想定して、知っておくと安心だと思います。今回は、緊急帝王切開となるケースや費用、赤ちゃんへの影響についてお話ししていきます。

 

緊急帝王切開とは?

緊急帝王切開とは、お母さんやおなかの赤ちゃんの健康状態が悪くなり、このままではお母さんと赤ちゃんともに障害が発生する可能性が考えられる、もしくは経腟分娩では分娩が難しいと判断されるときに行われる分娩方法です。経腟分娩と違い、おなかを切って赤ちゃんを取り出すことになります。


一方、予定帝王切開は明らかに赤ちゃんが大きく経腟分娩が不可能(児頭骨盤不均衡)、逆子(骨盤位)などの赤ちゃんの入り方(胎位)や姿勢(胎勢)に問題ある、前回の分娩が帝王切開や子宮筋腫などで子宮の手術の既往があるなどで子宮に傷が残っている(子宮破裂の危険性)、前置胎盤がある、母親に経腟分娩が困難な病気がある、などの原因で前もって日時を決めて帝王切開で赤ちゃんを誕生させるものです。

 

緊急帝王切開となるケースは?

緊急帝王切開とは、どのようなときに行われるのでしょうか。主なケースをご紹介します。

 

今後の分娩進行が期待できない長時間にわたる分娩、分娩の停止、破水症例

分娩時間が長くなれば、それだけお母さんは体力を消耗してしまいます。陣痛間隔が10分以内であるにもかかわらず、陣痛が弱いことや産道や骨盤が狭い、もしくは赤ちゃんが大きくて通れないなどで分娩がなかなか進まないことがあります。一般的に、初産婦さんで30時間以上、経産婦さんで15時間以上かかっていると遷延分娩(せんえんぶんべん)であると考えられます。すでに破水している場合は子宮の中に細菌が入りやすくなるため、感染のリスクも上がります。そのため、破水後も陣痛が弱い場合には、お母さんとおなかの赤ちゃんの状態を診ながら陣痛を促す薬を使ったり、時間がかかりそうな場合には緊急帝王切開での分娩が選択されます。

 

重症な妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に高血圧になるか高血圧に蛋白尿が出る疾患です。重症な合併症に赤ちゃんの発育に障害が起こる(子宮内胎児発育遅延)、赤ちゃんが出てくる前に胎盤が剥がれてしまう常位胎盤早期剥離、母親に脳出血が起きてしまう、けいれんが起こる子癇(しかん)発作などがあります。軽症かつ赤ちゃんが未熟な場合には安静にすることや血圧を下げる薬を使って、治療を行っていきます。しかし、妊娠や分娩の進行に伴い母親の血圧上昇が増悪し、母親の合併症が起こる可能性が高い時、赤ちゃんの元気がない場合(胎児機能不全、主に胎児心拍陣痛図により判断)に緊急帝王切開で分娩することになります。

 

常位胎盤早期剥離(じょうたいたいばんそうきはくり)

妊娠中もしくは分娩中で赤ちゃんがまだおなかの中にいるうちに、胎盤が子宮の壁から剥がれ始めてしまうことを常位胎盤早期剥離といいます。胎盤が剥がれることで出血し、その刺激で子宮が収縮し、硬く痛くなります。多くの常位胎盤早期剥離は急速に進行し、お母さんはショック状態になり、赤ちゃんは酸素不足のために機能が低下し、子宮内胎児死亡にもつながります。そのため、早く対処しなければ母児ともにとって命に関わることも珍しくありません。常位胎盤早期剥離は母児ともに急激に危険な状態となりますので、緊急帝王切開となります。

 

赤ちゃんがうまく回って出てこられない(回旋異常)

分娩が始まると、赤ちゃんは狭い産道をできるだけスムーズに通るために一定の動きをして回りながら、下りてきます。赤ちゃんが大きい場合や、何らかの原因でうまく回らないと分娩時間が長くなり、ときに分娩が止まってしまうことがあります。お母さんの姿勢を変えたり、医師や助産師が赤ちゃんをスムーズに下りられるように誘導したり、分娩の進行状態をみながら吸引分娩や鉗子分娩(かんしぶんべん)を行います。いずれの方法でも分娩が進まない場合や赤ちゃんの心拍が落ちてきたなど状態が良くない場合には緊急帝王切開となります。

 

おなかの赤ちゃんの元気がない

胎盤の機能が落ちている、臍帯(さいたい)が圧迫を受けている、などの何らかの原因で赤ちゃんが酸素不足になることがあります。赤ちゃんが酸素不足になっている状態が長く続くと、脳が低酸素状態となります。重症の場合にはとてもしんどい状態で赤ちゃんが生まれてくる(新生児仮死)、脳性麻痺などが発生する可能性もあります。そのため、経腟分娩ではまだ時間がかかると判断された際には、緊急帝王切開が選ばれます。

 

このような子宮内の胎児がしんどい状態を、胎児機能不全と呼びますが、主に胎児の心拍数を連続でみる胎児心拍陣痛により診断されます。

 

緊急帝王切開の診断から実施までの流れは?

上記などの理由により、緊急帝王切開が必要な状態だと診断された場合、医師からお母さんやパートナー、家族へ緊急帝王切開で出産することになる説明があります。病院側は緊急帝王切開の準備を整え、お母さんは手術室に移動し、麻酔をかけて緊急帝王切開を行います。


お母さんが話しを聞ける状態ではない場合は、家族の承認を得て手術が行われますが、家族がその場にいない場合もあります。そのような時は、緊急連絡先に電話をして、承諾をもらい手術を行います。一刻を争う事態では、緊急帝王切開の承諾を得る余裕がないこともあり、医師の判断で緊急帝王切開が行われることもあります。

 

緊急帝王切開になったら、費用はどのくらいかかるの?

自然分娩を予定していたのに緊急帝王切開となると、一体いくらかかるのか、費用も気になりますよね。緊急帝王切開での分娩費用は、入院・分娩となった曜日や時間帯、入院日数や入院中の病室タイプによって大きく異なります。緊急帝王切開となったのはお母さんとおなかの赤ちゃんの健康状態に問題が生じたためであるので、予定帝王切開よりも処置や治療、入院期間が長くなることもあり、それだけ入院費用もかかります。しかし、予定帝王切開を含めて帝王切開術そのものは病気に対する治療として行われるものであり、公的保険が効きますので分娩費用自体は、それぞれの病院の経腟分娩よりも10万円~20万円程度高いものとなることが多いと思われます。

 

高額で心配になる方もいらっしゃると思いますが、出産育児一時金の支給がありますし、入院中にかかった金額によっては高額医療費の申請を行うこともできます。また、個人で加入している医療保険の内容によっては、帝王切開で保険金の支払いを受けることもできます。各自が入られている保険会社や医療機関に聞いてみるのが良いでしょう。

 

緊急帝王切開は、赤ちゃんに影響はあるの?

帝王切開の時に使われる麻酔についてですが、予定帝王切開では、通常おなかより下の痛みだけが無くなる腰椎麻酔(背中から針を刺す麻酔)で行われ、母親の意識がある状態で行われます。しかし、緊急帝王切開での緊急度によっては、より麻酔が早くかけられるように全身麻酔が選択されることがあります。おなかより下に麻酔をかける場合(腰椎麻酔)は、背中の神経の近くに薬を投与するため、赤ちゃんには麻酔は効いていません。しかし、全身麻酔の場合はガス麻酔(一部静脈麻酔も併用)を行いますので、胎盤を通して麻酔ガスは赤ちゃんにも届きます。その影響で、産まれた後に一時的に少し眠そうにしたり、呼吸が弱くなることがあり、一時的に補助呼吸を必要とすることがありますが、薬の影響がなくなればすぐに元気になりますので、心配いらないでしょう。


緊急帝王切開は、予定帝王切開の時と比べて、経腟分娩を行っている中で母子のどちらかあるいは両方に何らかの原因があることによって行われるため、母子ともに手術後は帝王切開になった理由により、赤ちゃんの状態は変わっていきます。しかし、緊急帝王切開自体そのものは、赤ちゃんにほとんど影響することはありません。


その他に、予定帝王切開と緊急帝王切開両方に共通することですが、本来は経腟分娩の過程で赤ちゃんは外の世界で呼吸をする準備を行うといわれています。赤ちゃんは羊水の中にいますから、肺の中も羊水と同じ液体で満たされています(肺液)。この肺液は経腟分娩の過程で肺から体に吸収されたり、排出されたりします。帝王切開ではこの過程がなくなってしまうので、生まれて数日の間は赤ちゃんの呼吸が不安定になりやすくなる場合もあります。


また、早産の時期(妊娠37週未満)に緊急帝王切開が必要となった場合、特に赤ちゃんの肺機能が充分にできあがる妊娠34週前に緊急帝王切開となった場合には、呼吸障害が起こることもあります。呼吸障害の状態によっては、NICU(新生児集中治療室)管理、酸素投与や人工呼吸管理、薬の投与で呼吸機能の改善を図ります。

 

まとめ

緊急帝王切開は、お母さんとおなかの赤ちゃんの健康状態に何らかの問題が生じ、妊娠や分娩を継続することが難しいと判断された場合に行われます。緊急帝王切開術は、麻酔も手術そのものも短時間で行わなければならないので、予定帝王切開よりは危険性が若干は増しますが、特別に大きな危険性はありません。母親や赤ちゃんへの影響は、緊急帝王切開になった原因や重症度に大きく依存しています。しかし、緊急帝王切開を行わなければ、母親も赤ちゃんもより深刻な状況となる可能性が高いですから、不安はあるでしょうが、緊急帝王切開をためらってはいけません。


妊娠や出産はいつ何が起こるかわかりませんので、緊急帝王切開になることも頭に入れておくといざ緊急帝王切開となった時に少し安心できるかもしれませんね。緊急帝王切開での出産は高額になることも多いのですが、自治体や職場からの手当金があること、一部保険適応になるために高額診療の申請も可能な場合があります。自己負担を減らすことができますので、医療機関や保険会社に相談して忘れずに申請しましょう。

 


※参考:

・『産婦人科研修ノート 改訂第2版』(診断と治療社)p.367〜372
・『病気がみえる vol.10 産科』(MEDIC MEDIA)p.27,98,99,104〜106,114〜107,272〜279,292〜293,330,331,354,359
・ 帝王切開ナビ「帝王切開の出産費用について

 

監修者

医師 北川 博之 先生

産婦人科 | 医療法人至誠会 梅田病院院長


昭和56年愛媛大学医学部卒業。その後愛媛大学付属病院にて産婦人科講師、助教授として勤務。愛媛県立医療技術大学教授を経て、平成20年より現職の梅田病院に院長として就任。現在も愛媛大学、広島大学などで非常勤講師として教育にも従事。
 

HP:医療法人至誠会 梅田病院 


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