「伝えることを諦めてた。言葉にしなくちゃだった」と後悔の言葉をこぼす妻の手をそっと握り、夫は「雪穂は自分を責めないで。全部俺が悪いんだ! ごめん!」と頭を下げて謝罪した。
幸せにするって約束したのに、雪穂の笑った顔が大好きだったはずなのに、大事な人を傷つけて、泣かせてしまった。
娘と向き合ってこなかった期間と、考えるようになった期間では、時間があまりにも違うから、今はまだ信じてもらえなくても無理はない。
「俺のことは信じなくて……、許さなくていいよ」
思いもよらない言葉に、ぎょっとする妻。夫のこの言葉の真意とは?
「許そうとせず疑ったままでいい」
「俺のこと、許さずに、忘れないでいてほしい。それだけのことを、俺はしてしまったんだから……」
「どんなに俺が変わっても、過去のことが許されるわけじゃない。雪穂たちを傷つけ事実は変わらないから、許そうとせずに、疑ったままでいいよ」
「許さず、疑ったままでいい」という言葉の真意を知り、スッと胸のつかえが下りた妻。
確かに変わった、昔理想を描いていた父親像に近い今の彼を信じていいのか……。妻はある質問をする。
「結のこと、どういう風に見えてる?」
夫の答えは?
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