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赤ちゃんはどうなる!?ドラマ『コウノドリ』第5話を振り返る【後編】

こんにちは!助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第5話、今回は、切迫早産とIUFD(子宮内胎児死亡)のエピソードについて振り返りたいと思います。

 

こんにちは! 助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第5話、今回は、切迫早産とIUFD(子宮内胎児死亡)のエピソードについて振り返りたいと思います。

振り返り【前編】を読む

2人の妊婦さん

篠原ゆき子さん演じる西山瑞希は、妊娠27週の妊婦健診の結果、切迫早産と診断され緊急入院となりました。病室には、先に切迫早産で入院していた妊娠30週の経産婦、矢沢 心さん演じる七村ひかるがいました。2人は意気投合。おなかの張りを抑える点滴の針の交換も、おなかの赤ちゃんのためとお互いに励ましあい、乗り越えていきました。

 

一般的に産婦人科では、切迫早産、産後、婦人科の術後など、同じような状況の患者さん同士を同じ病室にする傾向があるように思います。切迫早産の患者さんは、入院期間も長くなることが多いので、瑞希とひかるのようになかよくなるママも多いです。

 

切迫早産で長期入院しているママにとって、とにかく安静の日々、点滴の副作用、便秘などに悩まされることが多いですが、ドラマでもあったように点滴の針の交換はなかなかつらいようです。点滴に使われる針は、外側がやわらかい素材で作られたカテーテルで、内側が金属という構造になっています。針が血管の中に入ったら、金属の部分を抜き取り、カテーテル部分だけが残り、自由に腕を動かせるようになっているんですよ。ですが、長期に点滴をしていると漏れやすくなったり、感染予防の観点から定期的に針の交換が必要になるんです。
 

瑞希に訪れた思いもよらないできごと

瑞希が妊娠32週になり、サクラの超音波検査を受けていたときのこと。いつもより長い検査のあと、綾野 剛さん演じるサクラの口から発せられたのは、「西山さん、赤ちゃんの心拍が確認できません……」という言葉でした。このあと病室を個室に移し、ご主人も呼んで、少し時間をおいてから、もう一度超音波検査をおこなうという説明がされました。

 

深水元基さん演じる瑞希の夫、寛太も病院に到着し、星野 源さん演じる四宮先生によって再度超音波検査がおこなわれました。しかし、結果はサクラがおこなったときと同じく、おなかの中の赤ちゃんの心拍は確認されず、瑞希夫婦に、おなかの中の赤ちゃんが亡くなっていること(IUFD:子宮内胎児死亡)が伝えられました。

 

昨日の健診では問題なかったのに、昼間はおなかの中で元気に動いていたのに……と、明らかにIUFDのリスクがある場合を除いて、今まで正常な経過であってもIUFDは突然訪れます。診察している医師もそれに立ち会っている助産師も、冷静に対応しているようで、やはり心の中ではショックを受け、動揺しています。

 

おなかの中の赤ちゃんはどうなる?

IUFDと診断された場合、おなかのなかに赤ちゃんをずっと入れておくわけにはいきません。サクラが瑞希に説明したように、亡くなった赤ちゃんの組織因子がママの血液の中に侵入して、ママの血液を固める機能に異常をきたす「死胎児症候群」や感染症を発症するおそれがあるため、できるだけはやく赤ちゃんを産む必要があります。

 

おなかの中の赤ちゃんが亡くなると、80~90%は2週間以内に陣痛が来るといわれています。しかし、自然に陣痛が来るのを待っていられません。陣痛促進剤を使って、誘発分娩をおこないます。多くの場合、子宮口も出産の準備ができていないので、子宮口をやわらかくする処置が必要になることも。

 

ドラマの中では、バルンを子宮内に挿入する処置がおこなわれていましたが、私が働いていた病院では、「ラミナリア」という海藻でできた医療機器をつかって子宮頸管拡張をおこなっていました。そして出産当日は、音への配慮をしていました。病棟の構造上、分娩室の隣に新生児室があるので、なるべく赤ちゃんの声が聞こえないようにしたり、スタッフ同士の会話のトーンにも注意していました。

 

ドラマのなかでもあったように、出産が重なることもあります。おめでたいことばかりではないなかで、サクラが瑞希夫婦に「おめでとうございます」と声をかけたシーンがとても印象的でした。

 

瑞希の”悲しみ”の変化

突然おなかのなかの赤ちゃんの死を告げられた瑞希。瑞希の言動からも気持ちの変化も読み取れます。悲嘆のプロセスはさまざまな研究者によってそれぞれの段階に分けて説明されています。たとえば、精神科医である平山正美氏は、ショック→怒り→抑うつ→立ち直りという4段階を経ると述べています。

 

瑞希はおなかの中の赤ちゃんのが亡くなった事実にショックを受け、自分のせいで赤ちゃんが亡くなったのではないかと自分を責めます。そして、どうして赤ちゃんは死んでしまったのか、病院に入院していてなんで赤ちゃんが助からなかったのかと、怒りにも近い思いをサクラにぶつけていました。赤ちゃんを産んだ後、ひかるに「元っっ気な赤ちゃんを産んでね!」と伝えたとき、ご主人と一緒に赤ちゃんを沐浴させているとき、退院するとき、そして、ひかるにおめでとうのメッセージカードを贈るとき……いろいろなこころの動きがあったのではないでしょうか。

 

赤ちゃんが亡くなったという事実を受け止め、立ち直るまでのプロセスは順番通りでないこともありますし、立ち直るまでの時間も人それぞれです。そのようなママの気持ちの変化をくみ取り、支えていくことが医療者にとって重要だと思っています。サクラが言っている「患者さんに寄り添う」ということの答えはひとつではなく、正解がないということもあって、難しいなぁとも思います。

 


「患者さんに寄り添うってどういうことだろうね」という言葉を残して、瑞希の病室を出ていった下谷先生。第5話の最後に、下屋先生が診察したことのある妊婦さんがアレスト(心停止)の状態で緊急搬送されてきたシーンで終わりました。第6話も目が離せません!


著者:助産師 REIKO

医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

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