
家族の中でひとりだけ風邪をひき、高熱にうなされました。隔離された布団の中で、私が無意識に呼んだのは。何十年も口にしていなかった甘えた響き。そのひと言が、私に大切な気付きをくれました。
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家族にうつさないように隔離
子どもたちの看病なら、私が動きます。でも今回は私だけが発熱しました。夫は子どもにうつらないよう、私を別室へ移しました。判断としては正しいのだと思います。けれど、隔離という処置にどこか寂しさを感じてしまいました。
「早く横になって」と言われ、布団に入る。私はひとり、熱にうなされていました。誰かに背中をさすってほしい。冷たいタオルを替えてほしい。そんな思いが浮かんでは消えます。
でも母親である私は、自分のことは自分でやるしかない。そう思いながら、ただ天井を見つめていました。
無意識の呼び声にはっとした
ぼんやりとした意識の中で、私は何度も「お母さん」と呼んでいました。甘えた響きで、幼い子どものように。
はっとして目が覚めました。母をそんなふうに呼んだのは、何十年ぶりでしょう。ここにはいないのに、どうして口から出たのか。そのとき、私は幼いころの自分に戻っていたのだと気付きました。
認知症の方が遠い昔の記憶を鮮明に思い出すという話を聞いたことがありますが、強い記憶は体の奥に残っているのかもしれません。熱という非常事態が、その扉を開けたのでしょう。








