
私はアラサーの女性経営者。ケーキ職人兼オーナーだった父が療養のため引退したのを機に、小さいながら評判の店を継ぐことになったのです。昔から地元で愛されてきた店で、父の味を目当てに通ってくださるお客さまも多く、正直、私に務まるのか不安でいっぱいでした。そんな私を支えてくれていたのが、父の右腕として長年厨房を任されてきたベテランパティシエのA木さんです。ところが、店を継いで半年ほどたったころから、少しずつ店の空気が変わり始めたのです――。
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頼れるベテランパティシエに生まれた変化
仕入れ先や顧客との交渉、従業員のシフト、イベントの準備など、初めのうちはお店のことがまったくわからなかった私。ベテランのA木さんは、父の味を受け継いだお菓子を作ってくれるだけでなく、いつも的確なアドバイスで助けてくれていました。
私も父が残してくれたレシピや経営メモに目を通し、療養先にいる父から電話で助言をもらいながら、少しずつオーナーとしての仕事を覚えていきました。スタッフたちも次第に協力してくれるようになり、半年がたつころには、私もようやく店を回せるようになってきた実感がありました。
ですが、そのころからA木さんの態度に変化が見え始めます。相談をしても、「オーナーなんですから、自分で判断してください」と突き放されることが増え、言い方もどこかとげとげしくなっていったのです。
今思えば、父が現場を離れてから、A木さんの中で「この店を支えているのは自分だ」という思いが強くなっていたのかもしれません。そこへ、私がオーナーとして周囲から認められ始めたことが、焦りや複雑な感情につながっていたように感じました。
店の空気が少しずつ崩れていった
その後A木さんは、他のスタッフに対しても高圧的な態度を取るようになりました。
「この店は自分がいなければ回らない」という思いが態度に表れていたのだと思います。職場の空気は徐々にギスギスし、職人や販売スタッフの退職が続きました。店頭に並ぶケーキの種類も減り、客足も以前より少しずつ遠のいていきます。売上は落ち込み、経営も厳しくなっていきました。
それでも、父の味をもっとも理解しているのはA木さん。簡単に辞めてもらう決断はできませんでした。








