見過ごせなかった患者家族への態度
ある日、高齢の患者さんのご家族が、治療方針について不安そうに質問をされていました。するとA田先生は、少しいら立ったようにこう言ったのです。
「専門的なことを細かく説明しても、おわかりにならないと思いますので」
そのひと言で、ご家族の表情が一気に曇りました。
見かねた私はその場で静かに口を開き、「ご家族が心配されるのは当然です。私から、先生のお話をわかりやすくお伝えしてもよろしいでしょうか」と言いました。そして、今後の治療の流れや生活面での注意点を、できるだけかみ砕いて丁寧にお話ししました。ご家族は安心したように何度も頭を下げてくださいました。
72歳の経験が若手医師を黙らせた瞬間
その日の夕方、A田先生が少し不機嫌そうに「看護師がそこまで説明する必要はありますか?」と私に言いました。
私は穏やかに「じゃあ、少し言わせてもらうわね」と前置きした上で、こう続けました。
「患者さんやご家族が安心して治療を受けられるよう支えることも、私たち医療スタッフの大切な仕事です」
「年齢を重ねた分だけ、患者さんの不安に寄り添う言葉を覚えてきました。現場で積み重ねた経験は、決して無駄にはなりません」
すると、そのやりとりを聞いていた若い看護師たちや、普段から患者さんのフォローに追われていた看護師長が静かにうなずきました。さらに、その場にいた先輩医師も「診察だけが医療じゃない。信頼されることも仕事のうちだよ」と続けました。
一斉に周囲の視線がA田先生へ向きました。それまで強気だったA田先生も、自分だけが浮いている空気を察したのか、口を開きかけたものの、結局何も言い返せず黙り込んでしまいました。








