
息子が成長するにつれ、広がっていく距離感に戸惑う母親は少なくありません。何を考えているのか見えず、突き放されるような寂しさを覚えることも。この記事では、思春期の息子という“未知の存在”と向き合いながら、対話を続けた2人の母親たちの体験談を紹介します。
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思春期の息子と2年続いた泥仕合の行方

陽気で愛されキャラだった長男が、ささいなことでイライラするようになったのは、中学2年生のころでした。野球バッグのファスナーを無理やりこじ開けて壊したり、ポロシャツのボタンを外さずに脱いで引きちぎったり。そうかと思えば上機嫌で話しかけてくる日もあります。これがうわさに聞く思春期男子の反抗期なのか!? と、私は実感し始めました。
このとき私は46歳。長男が14歳、次男が11歳とまだまだ子育てに忙しく、更年期の不調もそれほど強く感じてはいませんでした。思春期男子の反抗期に漠然とした不安はあったものの、理由もなくイライラするような精神状態ではなかったのです。
更年期のイライラが強まりバトル開戦!
ささいなことで怒りを爆発させる長男の様子にショックを受けながらも、引きずられるように私も長男に対してイライラを募らせるようになりました。怒らないで話し合いたいのに、話せば喧嘩になるという悪循環。一度衝突したら、売り言葉に買い言葉の泥仕合が始まります。
息子から「ウザイ、出て行け!」と怒鳴られ、何がきっかけでこんな大喧嘩になったのだっけ? と、原因すらわからなくなる始末。強い疲労感やめまいなどの更年期症状もイライラに拍車をかけ、コントロール不能な迷走が続きました。
その後も長男の荒れっぷりはエスカレート。私と言い争いになった腹いせに、照明のスイッチを力まかせにたたいて壊すわ、部屋にバリケードを築いて立てこもり食事を拒否するわ、まるでドラマのような展開を見せ始めたのです。
それでも私に手を上げることは決してありませんでした。物に当たったり、暴言を吐いたりするけれど、必死に自分を抑えてもがいている。部屋の前に置いておいた食事をきれいに平らげ、キッチンに下げてきた長男のバツが悪そうな顔を見て、私はようやく自分の愚かさに気付きました。
心配だから、歯がゆいからと、つい口うるさくしてしまったけれど、そんなことは本人が一番よくわかっていたはず。多感なお年ごろの長男にとって、私はさぞかし「ウザい母親」だったことでしょう。
夫や次男の協力で事態は好転へ
私は深く反省し、ひたすら母としてやるべきことだけをやりました。食事を用意し、弁当を作り、野球のユニフォームを洗濯する。長男の生活に必要なことだけをおこない、必要でないことに口を挟むのをやめたのです。長男の態度はそう簡単には変わりませんでしたが、言い争いは劇的に減っていきました。
また高校受験など、これから先に控える長男にまつわるほぼすべてのことを夫に任せ、私はフォローに徹することにしました。私と長男がバトルを繰り広げていたとき、夫は中立の立場を取っていました。私のことを責めないけれど、長男のことも怒らない。そんな態度に不満を感じていましたが、結果的にはそれが正解だったようです。長男は素直に夫の話を聞いて勉強や野球に打ち込むようになり、高校生になるころには反抗期を卒業していきました。
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あれから7年。成人した長男とは今、あの嵐のような2年間を笑って振り返ることができます。しかし当時は、荒れる息子を鎮めるどころか、私自身が更年期の不調も相まって火に油を注いでいたと、親としての器の小ささを反省しています。
この経験から得た最大の気付きは、親も自分自身の状態(私にとっては更年期)を客観視すること、そして真正面からぶつかるだけでなく、あえて距離を置いて夫(中立な第三者)に任せるという選択肢を持つことの重要性でした。
著者:坂本みやび/50代女性。男子2人の母。夫の自営業を手伝いながらマイペースにライター活動中。息子の野球に全集中した12年間が終わり、燃え尽きた後にやってきたのは更年期と介護。趣味のヨガで体を整えている。
イラスト:しおみなおこ








