
私は35歳、都内のレストランを経営しています。最近引っ越したのをきっかけに、帰宅途中にある昔ながらの定食屋へ立ち寄るようになりました。自分の店の常連のお客さまから「一度行ってみて」と勧められていた店です。ところが、そこで出会った店員の女性に、私は強烈な先入観を抱いてしまったのです――。
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第一印象は最悪だった定食屋
その店は年季の入った外観で、いわゆる「町の定食屋」という雰囲気でした。夕食どきにもかかわらず、店内の席は半分ほど空いています。立地は悪くないのに、人気店にしては妙だと感じました。
ただ、厨房から漂ってくる香りは驚くほど食欲をそそります。常連らしき男性客が「味はいいんだけどなあ……」とつぶやいているのも耳に入りました。
注文を終えて待っていると、派手な髪色の若い女性店員が現れました。そして、ドンッと乱暴に注文した料理を置きながら「おっさん! ごはん大盛りね!」と声をかけてきたのです。気さくというより、かなりくだけた接客です丁寧な接客を重んじる店で経験を積んできた私には、正直かなり衝撃的でした。
そして食べようとしたところ、突然その女性が入口に向かって声を荒らげました。
「また来たの? 用がないなら帰って!」
入口には落ち着いた雰囲気の女性が立っていましたが、何も言わず去っていきました。私は店内の空気に戸惑いながらも、運ばれてきたかつ丼をひと口食べて、今度は別の意味で衝撃を受けました。
驚くほどおいしかったのです。味のバランス、揚げ加減、だしの深み。これまで数多くの店を食べ歩いてきましたが、素直に感動する味でした。
料理の裏にあった家族の事情
後日、私は改めてその店を訪れました。結果は同じでした。やはり、文句なくおいしい。私は思い切って料理人に会わせてもらえないか頼みました。
すると奥から現れたのは、車椅子の男性でした。女性店員の父だというこの男性は、以前は料理人として厨房に立っていたのだとか。しかし事故で長時間の調理が難しくなり、今では娘さんが調理も接客も、ほとんどの業務をひとりでおこなっているということでした。
女性店員は少し照れくさそうに「この店をなくしたくなくて、父を手伝ってるだけだよ」と言いました。しかし父親は「作り方は伝えたが、味をここまで仕上げたのは娘の努力だよ」と続けました。
私は自分が見た目や話し方だけで彼女を判断していたことを恥ずかしく思いました。








