
有名大学を卒業した私は現在、両親が営む八百屋で働いています。両親の店は、店頭販売だけでなく、近隣の飲食店や企業への納品もおこなう青果店です。大学で学んだ経営や販売の知識を生かし、店頭での接客だけでなく、仕入れや飲食店への納品、販売促進なども担当。地域の常連さんと顔を合わせながら働く毎日に、忙しくも大きなやりがいを感じていました。そんなある日、店頭で高校時代の同級生・Y子に声をかけられました。
★関連記事:「親の工場を継ぐなんてラクでいいよな」合コンで高卒の私を見下す同級生。女性のひと言に慌てたワケ
八百屋で再会した同級生
「あれ? 有名大学に進学したのに、八百屋で働いているの?」
声をかけてきたのは、高校時代の同級生・Y子でした。久しぶりに会ったにもかかわらず、あいさつもなく、驚いたように店内を見回しています。言い方に引っかかりを覚えましたが、私は気にしないようにして「久しぶり。ここは両親の店なの。今は私も一緒に働いているんだ」と答えました。
するとY子は、待っていましたとばかりに自分の話を始めました。
「私は今、大手企業の本社で働いているの。毎日忙しくて、買い物をする暇もないくらい。食事もほとんど外食かテイクアウトよ。商店街の八百屋とは縁がない生活なの」
そこまで言うなら、なぜ店に立ち寄ったのだろうと思っていると、奥で野菜を仕分けていた母が顔を出しました。母が「それなら、今日はどうしたの? うちは野菜を買いたい人が来る店だけど」と淡々と尋ねると、Y子はむっとした表情になりました。
「たまたま通りかかっただけよ。それにしても、親子そろって八百屋だなんて。有名大学まで出たのに、学費がもったいなかったんじゃない?」
私だけでなく両親の仕事まで見下す言葉に、さすがに腹が立ちました。しかしY子は、私たちが何も言い返さないのをいいことに、「古い店で大変そうね」と言い残し、笑いながら立ち去っていったのです。
繰り返される心ない言葉
Y子の勤務先は商店街の近くにあり、店の前が通勤経路になっているようでした。最初に母から言い返されたことが気に入らなかったのか、その後は私を見かけるたびに、聞こえよがしに嫌みを言うようになったのです。
「有名大学を出たのに、結局は親の八百屋なのね」
「せっかく勉強したことが無駄になったんじゃない?」
そんな言葉にも、最初は相手にしないようにしていました。しかし、店内にいるお客さまが戸惑った様子で振り返ることもあり、営業にも支障が出かねません。私は店の外へ出て、Y子に伝えました。
「私たちに言いたいことがあるなら、ほかのお客さまに聞こえないように話して。買い物の用事がないのに、店先で大声を出されるのは困るよ」
するとY子は、悪びれる様子もなく笑いながらこう言いました。
「私は事実を言っているだけ。私みたいに大きな会社で働いている人間から見たら、八百屋なんて地味な仕事でしょ?」
その日は午後から、取引先が自社で運営する社員食堂への納品契約について、総務担当者と打ち合わせをする予定でした。ちょうどそのとき、スーツ姿の男性が店へ入ってきたのです。男性の顔を見た途端、Y子の表情が固まりました。
「S山課長……。どうしてここに?」
男性は、Y子が勤務する大手企業の総務部で、自社運営の社員食堂を担当する課長でした。








