
香りを楽しむ香水は適度につければ好ましいものです。一方で、同じ香りに慣れてしまうと、自分では強さに気付きにくくなり、気付かぬうちにつける量が増えていることもあります。香りのマナーを痛感した2人の女性のエピソードを紹介します。
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気持ちを保つために選んだ香り

隣の席の営業職の男性の、たばこと缶コーヒーが混じったにおいがどうしても苦手でした。同じ空間で過ごすうちに、少しずつ気持ちが沈んでいくような感覚がありました。注意する勇気もなく、ただ我慢を続ける毎日が続きました。
自分を落ち着かせたくて、愛用していたブランドのローズ系の香水を、いつもより少し多めにつけて出社するようになりました。彼氏に「この香り、すごく好き」と言われていたこともあり、自分にとっては安心できる香り。その香りに包まれていると、心が少し穏やかになれる気がしていました。
ある日、先輩の女性社員に
「最近、香水がきつくて気持ち悪くなるのよ」
と声をかけられました。突然の言葉に驚いて、うまく返せませんでした。自分のためにつけていた香りが、誰かを不快にさせていたかもしれない——その瞬間、胸の奥がひやりと冷たくなりました。気持ちの整理がつくまでには、少し時間がかかりました。
◇◇◇◇◇
今でもふと、あの張りつめた空気を思い出すことがあります。良かれと思ってつけた香りが、誰かにとっては負担になってしまった経験。それは、私自身が隣の席のにおいを一方的に不快だと感じていたことと、本質的には同じだったのかもしれないと気付かされました。
この経験を生かし、周りに気を配りながら自分も心地よくいられる香りを選びたいと感じています。
著者:湯川いちご/40代女性・会社員
イラスト:藤まる








