
私は都内のスーパーで長年店長を務め、売り場づくりやスタッフの勤怠管理、地元の取引先との交渉など、店舗運営全般に携わってきました。その後、これまでの経験を生かして各店舗を支援するため、本社の営業部へ異動することに。そんな私の異動を前に、次期店長に選ばれたのが後輩のB田でした。しかしB田は、これまでのやり方を大きく変えようとして……。
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後任店長に選ばれたB田の自信
B田は長くこの店舗で働き、正社員として売り場責任者も経験していた後輩です。私の異動に伴い、後任の店長に選ばれました。
異動を控えたある日、私がアルバイトのA子さんと棚卸しをしていると、近隣店舗の店長・C川との打ち合わせを終えたB田が、C川と一緒に売り場へやってきました。
「これからは私が店長だから、売り場もいろいろ変えていくつもり!」
張り切るB田の横で、C川も「今までのやり方にこだわる必要はないよ。利益を出せる方法をどんどん試したほうがいい」と背中を押していました。
さらにB田は、私が以前、取引先から思うような値下げを引き出せなかったことを持ち出し、「ああいうのはもっと強く言わないとダメなんですよ! 私だったらもっとうまく値下げ交渉できます」と言いました。
そんな2人が去った後、A子さんが私に向かって小声で言いました。
「B田さん、売り場だけじゃなくて、取引先との付き合い方まで変えるつもりなんでしょうか。今までのやり方にも、それぞれ理由がありますよね……」
私も同じことが気になっていました。もちろん、店長が変われば新しい取り組みがあって当然です。ただ、長く続いている方法には、それなりの経緯や理由があります。引き継ぎの際にもその点は説明しましたが、当時のB田には「自分ならもっと良い店にできる」という自信のほうが強いように見えました。
採算を優先した結果
本社へ異動した後も、私はA子さんや店舗スタッフから、時々店の様子を聞いていました。店長になったB田は、売り場のレイアウトや特売商品の見せ方、発注量などを次々に変更しているとのことでした。
中でも大きかったのが、地元のある農園との取引です。私たちの店舗では、本部のルールの範囲内で地元の生産者から商品を仕入れる取り組みをおこなっており、店長も本部の仕入れ担当者と連携しながら、取引条件の調整に関わっていました。
その農園の野菜は、うちのスーパーでも特に人気がありました。少し価格は高めでしたが、「ここの野菜を買うために来ている」というお客さまもいたほどです。
私は異動前、その農園について「価格だけで判断せず、大切にしてほしい取引先」とB田に伝えていました。しかし契約更新の時期になると、B田は採算を改善したいと本部の担当者へ相談し、本部の担当者を通じて、農園側に仕入れ価格や販売条件の見直しを提案したそうです。
農園側にも生産コストなどの事情があり、話し合いは難航したとのこと。最終的に条件が折り合わず、いったん取引を終了することになったと聞きました。
その後、A子さんから「『あの農園の野菜はもう置かないんですか?』と尋ねるお客さまが増えている」と聞きました。
ちょうどそのころ、青果部門の売り上げだけでなく、店舗の客数にも落ち込みが見られるようになったそうです。B田も、取引終了が店に与えた影響の大きさを、このとき初めて実感したようでした。








