
以前の職場で、私はある女性の話に何度も耳を傾けました。普段は懸命に働く彼女が、ふとした瞬間に疲れた表情を見せることがありました。その理由を知るにつれ、家庭の中で逃げ場を失っていく彼女のつらさが、少しずつ伝わってきたのです。
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20年近いブランクを経て働き始めた女性
あるとき、以前の職場に新人の女性が入ってきました。
「働くのは約20年ぶりなので、ご迷惑をおかけするかもしれませんが……」
緊張した様子であいさつする彼女を見て、少しでも気持ちがほぐれればと思い、私は積極的に話しかけていました。
仕事を始めようと思ったきっかけを尋ねると、彼女は「実は……」と神妙な表情で事情を明かしました。
家にいることがつらくなった事情
彼女には受験生の子どもがいました。夫は仕事が忙しく、家を空けることが多かったため、夫が不在の間も自分が子どもを支えようと、日ごろから頑張っていたそうです。
そんな中、彼女が住むマンションの上の階に、幼い子どもがいる家族が引っ越してきました。
最初のうちは、「自分の子どもも小さいころはやんちゃだったから仕方がない」と考え、騒音にも目をつぶっていたそうです。
しかし、昼夜を問わず「ドタドタ」という音が響く日が続きました。受験を控えた子どもがいることもあり、彼女は穏便にお願いしようと、上の階の住人を訪ねました。
「うちには受験生の子どもがいます。マットを敷いていただくなど、少し配慮していただけませんか」
ところが、音は収まるどころか、以前より大きく感じられるようになったそうです。時には、大人がその場で跳んでいるようにも聞こえる「ドン、ドン」という音まで響くようになりました。
管理会社に相談しても状況は変わりませんでした。それどころか、やがて管理会社から「神経質な人ですね」とまで言われるようになったそうです。
「昼夜を問わず音が聞こえて、ノイローゼになりそうだったの。だから、昼間は働きに出ることにしたのよ」
彼女は心底疲れ切った表情で話してくれました。







