残業を押し付けられ我慢できなかった私
その翌日は、夜に新入社員歓迎会が開催される予定でした。飲み会は苦手ですが、さすがに欠席はできません。みんなに合わせて私も残業にならないよう、仕事に集中していると……。
イジワル先輩が私に近寄ってきて、「地味子はどうせ歓迎会には来ないでしょ? 残業よろしくぅ~」とニヤニヤしながら、私のデスクにバサッと資料を置いたのです。
「あんたが来たって、陰気で迷惑なんだから、ひとりで残業しろ! そのほうがみんなのためよ!」
さすがにこれは、我慢の限界……。しかし、はっきり反論すべく顔を上げた私の前に、影が立ちはだかったのです。
「ご自分の仕事はご自身で対応されたらいかがですか? 理不尽で大人げない行動をずっと続けるおつもりですか?」
私は、どうして新人くんが目の前に立っているのかと驚きながら、彼の背中を見ていました。さっきまでほくそ笑んでいた先輩もあっけに取られています。
「それから歓迎会は、こちらの先輩が残業で欠席なら、恐縮ですが僕も不参加にさせていただきます」
実は彼は…
「は、はぁ!? 今日はあなたの歓迎会でしょ? 地味子なんて放っておけばいいじゃない!」と叫んだイジワル先輩に向かって、新人くんは堂々と言い放ちました。
「できませんよ。僕、彼女が初恋の人なんです」
「「えぇぇぇええぇええぇええ!?」」
私は思わず、大声で叫ぶイジワル先輩にユニゾンをしてしまいました。初対面じゃなかったの!?
「両親の離婚で名字が変わりまして。それに当時は分厚い眼鏡をかけていたので……。覚えていませんか? 小学生のころ、読書クラブにいた眼鏡の男の子を……」
「も、もしかしてあのときの……?」
そう、まさに先日回想したあの男の子。下の名前は新人くんと同じです! あのころ、交わした言葉は少なかったけれど、しずかに隣に来てくれる存在に救われていた私。しかし彼は遠くに転校し、それっきりだったのですが、こんなところで再会するなんて!
イジワル先輩は、みんなの前で狙っていた新人くんに振られるような形になったことが耐えられなかったのか、それからしばらくして、自主退社していきました。一方の私はというと……。彼とデートを重ね、晴れて恋人同士になりました。
「実は僕、偶然この会社できみが働いているって聞いて。それで入社試験を受けたんだ。こんなことを言ったら引かれるかもって思って黙っていたけど……」
ずっと心のどこかで私のことを気にしていてくれた彼。その気持ちが素直にうれしく、私は今とても幸せです!
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