裏切られた私…
聞けば、業界大手のライバルチェーン店から引き抜かれたのだとか。おまけに、「私がとってきた大口の法人顧客は全部いただくわ」と豪語する始末……。
優秀な彼女へのヘッドハンティングは仕方がないにしても、店の大口顧客を奪うのはルール違反では? それに、いくら最初は営業のおかげだとしても、わが社のサービスに満足してくれていた法人顧客が、簡単に他社に乗り換えるとは思いたくありませんでした。
しかし、アツミは勝ち誇ったように言いました。「このクリーニング屋には将来性がない。顧客を連れて大手に移るのは当然のこと。ビジネスだから割り切ってね」
あっさり裏切られた私は「終わった……」と大ショック。しかし残った社員とお客様のために、たとえ大口顧客を失っても閉店するわけにはいきません。前を向こうと顔を上げて店内を見回したそのとき、思わぬ人物がやってきました。
救世主の登場!
現れたのは、アツミが営業を断られたと憤慨していた電気器具メーカーの女社長でした。ぼう然としていた私に彼女はこう切りだしたのです。
「つかぬことをお聞きしますが、こちらにいたアツミという営業の方が転職すると伺って……」
彼女がまさに今日付けで退職したことを伝えると、女社長は喜色満面に。「実は、彼女が辞めるのを待っていたの。傲慢な態度で信用できなかったから。でも、こちらのお店がクリーニングの質もサービスも素晴らしいということは前から知っていました。だから、あなたと直接契約させてください」
捨てる神あれば拾う神あり! 大感激の私に、女社長はここ数日間のアツミの言動を教えてくれました。なんと彼女、取引先に私の店が近々つぶれるとウソをつき、転職先と契約するよう促していたそう。人脈の広い女社長の話は信ぴょう性があり、妙に過信していたアツミの様子にも納得がいったのでした。
「事実無根のウソで自社をおとしめ、転職先に顧客を移すなんて卑劣な手は認められません。転職先のクリーニングチェーンにもこの話は伝わっている。今ごろ大変なことになっているはずよ」








