あのころの記憶…
昔から、マリの家は裕福なセレブ。ただ、金持ち自慢が激しくて皆から嫌われていました。私のことはもちろん、事故で両親を亡くしバイトを掛け持ちして兄弟で暮らしていた同窓生のこともちょう笑する始末。私も彼もくだらないマウンティングは無視できましたが、ついに私の母親についてもバカにし始めたのです。
「あんたの母親、夜の店で働いているって? 貧乏過ぎてやばい~」
さすがに私が言い返そうとすると、隣にいた同級生の彼がふいに顔を上げ、マリに釘をさしたのです。
「いいかげんにしろ! 自分の力で稼いだこともないくせに人の家庭や仕事のことをとやかく言って、何さまなんだよ? いくら金持ちだろうと、お前みたいにはなりたくない」
あのとき、普段物静かな彼にハッキリ言われ、クラス中から白い目で見られたマリは、顔を真っ赤にして怒っていました。
その後、私たちは高校を卒業。マリは遠方の大学へ進み、私や彼は地元で就職したのでした。
それなら隣のディーラーへ!
マリとの思い出なんて、ネガティブなものばかり。私は彼女に背を向け、隣のディーラーへ行こうと決意しました。するとマリは、「あ、帰るのねぇ。ありがとうございました~」とニヤニヤしながら店中に聞こえるように言ったのです。そこで私は、同じくらい大きな声で宣言しました。
「ええ、隣のお店で10台買いますね!」
それを聞いて年配の男性店員がすっ飛んできました。「申し訳ございません! この者がご無礼を……」
彼はどうやらマリの父親、このディーラーの店主のようです。私は、貧乏人扱いされて帰るように言われた経緯を説明。彼は必死で平謝りでしたが、マリはまだ「だってこいつ、お金もないのに……」と私をにらみつけています。
ちょうどそのとき、夫と娘が店内に入ってきました。
「お母さ~ん。どう、良さそうな車あった?」








