父の意外な決断
数日後、父は「話がある」と言って家族全員を呼び出しました。これまで一度もお見舞いに来ていなかった兄も、なぜか今日は瞳を輝かせて登場。すると父は、兄に向って宣言したのです。
「お前に、遺産を譲ると遺言書を書いた。長男としての自覚を持て」
盗み問題が解決しないままで兄に遺産相続の遺言書を残すだなんて、私は到底納得できません。しかし母は、「お父さんの考えを尊重しよう」と冷静です。もちろん兄は大喜び。文字通りスキップで帰っていきました。
さらに日がたち、父の体調が悪化。そしてついに医師から連絡が入ったのです。「お父さんはがんで余命数週間です」
この宣告には、その場で涙してしまった母と私。しかし兄だけが「やったー!遺産ゲットだぜ!」と狂喜乱舞し、そのまま病室を後にしました……。それから兄は、バイトすら辞めて、ギャンブルやキャバクラ通いと散財し出したのです。
まさかの展開に
兄が父の死を待ち望み、豪遊し始めてからさらに数週間後。ついに最後の面会のチャンスだと連絡があり病室に駆けつけると、医師から、父が兄と2人きりで話したがっていると言われたのです。
「ま、これで最後なら、別れのあいさつくらいはするか。遺産が待っているわけだし」と親不孝者の兄は、ニヤニヤ顔で病室に入っていきました。
廊下に残された私たちが、暗い表情で待っていると……。
「うぎゃぁぁぁ!!」と、兄の悲鳴が響いてきました。「と、父さん! 余命数週間なんじゃ……!?」
急いで病室の扉を開けると、2人きりの室内で父がむくりと起床。
「いやいや、この通りピンピンしているさ」








