実は私…
「はい! 私、医者です!」と名乗り出た私。倒れた方は隣室にいた女性で、私は医者として迅速に対応しました。目の前で毒づいていたA男は「え!?」と目を白黒させています。
「中卒のお前が医者だって? でまかせもいいかげんに……」
「うるさい! 今、あんたに構っている暇はない!」とA男を一蹴し、救命処置に専念していたのですが、今度はA男が「社長!?」とすっとんきょうな声を上げました。
なんと、隣室にいて助けを求めていた男性は、A男が課長を務めるという会社の社長だったのです。しかも、倒れた女性の婚約者でした。
まさかの偶然に社長もビックリ。「どうりで聞き覚えのある男性の声だと思った……。ひどい暴言を吐いていたようだが……」。どうやら隣室にも、私をさんざんバカにするA男の声が響いていたようでした。そして、的確に応急処置をしている私を見て感銘を受けた様子です。
実は、私は独学で高卒認定試験に合格後、在宅バイトをしながら勉強し医学部に入学。父の病気も快方に向かい、奨学金と努力で医師となっていたのです。
化けの皮が剥がれて
そうこうするうちに、救急車が到着。救急隊員に女性の容体を詳しく説明した私に、A男が捨てセリフを吐いたのです。
「お前、医者だからって調子に乗るな! 昔からお前は、上から目線でムカつくんだよ!」
目の前に苦しそうな患者さんがいるっていうのに、なんて場違いな……。すると社長さんが怒ってこう言いました。
「君はさっきから何だ! 私の婚約者の命がかかっているというときに……! やはり人事部から聞いていた話は本当だったと思わざるを得ない。君が部下に嫌がらせし、ハラスメントをしているという訴えが届いている。戒めのため、降格させてもらうよ」
「お、俺は専務の息子ですよ!」と青ざめて父親の七光りを持ち出したA男。社長はブチギレです。「専務の息子だからって、何でもしていいと思っているのか!」
私は構わず、社長を急かしました。「あの、すみませんが! 早く救急車に乗ってください!」








