
私は82歳になります。ある日から、昔からご縁のある洋菓子店で、店長に頼まれてアルバイトとして働くことになりました。長年お付き合いのあるお店だったので、久しぶりの現場に胸が高鳴っていました。初出勤の日、店内には2人の高校生アルバイトがいて……。
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バイトの先輩、だけれど…
アルバイト初日。厨房で店長に改めてあいさつすると、仕込み作業を手伝うように指示されました。ほかの従業員にもあいさつをしようとすると、ホールでは高校生くらいのきょうだいが掃除をしていました。
私が自己紹介すると、彼らは年齢を聞いて驚いた様子。「82歳なんですか!? うちのおじいちゃんより上かも」と目を丸くします。その後、高齢の私に不安でいっぱいのようで、「体、大丈夫ですか? 結構忙しいんですよ」ときつい口調で言われました。
少々ぶっきらぼうではありましたが、若い子特有の戸惑いもあるのだろうと思い、私は気に留めませんでした。ちょうどそのとき、店長が厨房から駆けつけてきたのです。
過去の経験
店長はきょうだいに向かって、「この方は昔から店に関わってきた大先輩なんだ。失礼のないように」と穏やかに注意。きょうだいは驚いた様子で、「すみません、知らなくて……」と頭を下げてくれました。
私は「間違いに気付いて謝れるのは立派なことだよ」と返し、ついでに自分のこれまでの歩みを簡単に話しました。
貧しい家庭で育った少年時代、中学卒業後にこの洋菓子店で修業を始めたこと。先代店長のもとで経験を積み、一人前のパティシエになれたこと。30歳のころ海外勤務の話が舞い込み、先代店長に背中を押されて渡米したこと。そして40歳で独立し、家族や仲間と店を切り盛りしてきたこと……。
「80歳を迎えて帰国することにしたのは、先代店長の訃報を聞いて、どうしてもお礼が言いたかったからなんだよ」と話すと、きょうだいは真剣なまなざしで耳を傾けてくれました。








