定年退職と同時に決意した“別れ”
そして定年退職を控えたある日、私は離婚を決意しました。長年我慢してきましたが、「このままでは誰も幸せになれない」と思ったのです。
離婚の話を切り出すと、妻も同じことを考えていたようで、話はすぐに進みました。お互い冷静に話し合い、財産分与や今後の生活についても、法的手続きを踏まえて整理することにしました。
結果的に、私は必要な生活資金を確保した上で、静かな環境に引っ越し、新しい生活をスタートさせたのです。
退職後の“第二の人生”
退職後は、これまでの経験を生かして翻訳の仕事をしています。シルバー人材の登録制度を利用し、社宅で穏やかな生活を送っています。
しばらくして、かつての妻から突然電話がありました。「退職金、いつ振り込まれるの?」。開口一番、何かを期待しているような、そんな言葉でした。
私は静かに答えました。「退職金は、離婚時の取り決め通り、自分名義の口座で管理しています。その資金はすでに新しい生活のために使う予定があるので、ご心配なく」。
電話口の向こうで、言葉を失ったような沈黙が流れました。私は続けました。
「お互い、もう別の人生を歩むと決めたんです。こちらの生活には関わらないでください」
そう告げて通話を切った瞬間、胸の奥に長年の重荷がすっと下りた気がしました。怒鳴り返すでもなく、争うでもなく、“静かな言葉で線を引く”――それが、私なりのけじめでした。








