すれ違いの果てに
数日後、夫から「どこにいるんだ」とメッセージが届きましたが、返信はしませんでした。その夜、A子ちゃんから電話がかかってきて、「なんで来なかったの! 進路の話だったのに!」と怒鳴る声が聞こえました。
私は静かに答えました。「あなたが『来ないで』と言ったからだよ」。一瞬の沈黙の後、電話口に夫の声が割り込み、「母親なら行くべきだった」と責めるように言いました。
私は深呼吸して「家族のために働いていると言いながら、どこに誰といるの?」と返すと、夫は黙り込みました。その沈黙が、何よりも雄弁(ゆうべん)でした。
新しい道へ
その後、夫との話し合いの末、私たちは離婚という形を選びました。慰謝料などの話し合いも穏やかに進み、私は兄の家で静かに新しい生活を始めました。翻訳の仕事を続けながら、自分の心を少しずつ取り戻していったのです。
数か月後、A子ちゃんから涙声の電話がかかってきました。
「ごめんなさい。あのときの言葉、ずっと後悔してる。パパもいろいろあって……」
詳しくは話しませんでしたが、どうやら夫の仕事上のトラブルが原因で家庭も職場もぎくしゃくしているようでした。
それでも、彼女が「また会いたい」と言ってくれたことが、何よりうれしかった。私はそっと、「いつでも話せるからね」と伝えました。
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家族の関係は、見た目や立場ではなく「信頼」と「思いやり」で築かれるものですよね。夫の小さな秘密や娘の反発に傷つきながらも、ようやく「自分の人生を選ぶ強さ」を手に入れられてよかったですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








