予期せぬ再会
数日後、思いがけない出来事が起こります。私の会社と姉の会社が、同じ案件で共同提案をおこなうことになったのです。スポーツイベントの広告プロジェクトで、私たちが紙媒体を、姉の会社が映像を担当するというものでした。
打ち合わせ当日、姉とC美さんが来社。C美さんが「頑張ってくださいね」と小声で励ましてくれました。B男は「負けるわけにはいかない」と意気込んでいましたが、姉の前では明らかに緊張していました。
彼は「背負う」「勇者」といったワードを用いた勢いのあるスローガンを出しましたが、姉は首をかしげ、「もう少し柔らかい印象のほうが良いかもしれませんね」と返しました。そして私に、「あなたならどう考えますか?」と振ってきたのです。
私は、「女性アスリートや観客にも親しみを持ってもらうには、『しなやか』『頂き』という言葉が合うかもしれません」と提案しました。姉はうれしそうにうなずき、「その方向性が今の時代に合っていますね」とまとめました。
新しい道へ
打ち合わせの終盤、私に向かって姉が思いがけない言葉を口にしました。
「あなたは、これからも広告に関わるお仕事を続けるのですか?」
突然の質問に少し戸惑いましたが、「はい、もっと学びを深めたいと思っています」と答えました。
すると姉は、やわらかくほほえみながら言いました。
「もし機会があれば、うちの会社のセミナーや勉強会にも顔を出してみてください。業界の動きを知る良い機会になると思います」
B男が「商談の場でそういう話はちょっと……」と口を挟みましたが、姉は「もちろん正式な話ではありません。彼が自分の力を試したいと思うなら、そのきっかけになればいいなと」と穏やかに言葉を返しました。
姉の言葉には押しつけがましさはなく、むしろ弟としてではなく「ひとりの社会人」として見てくれている温かさを感じました。私はその真摯な姿勢に心を動かされ、「ありがとうございます。自分でも考えてみます」と答えました。
その後、本当に転職することになり、今は姉の会社の一員として働いています。一方、B男はというと、最近では周囲との温度差に悩んでいるようで、私のことを「楽しそうでいいな」とこぼしているのだとか。BBQでのあの日の出来事が、私にとって大きな転機となりました。
まとめ
姉は、B男の得意げな申し出をやんわりと断りつつ、私の「相手を考えて行動する」という小さな配慮を、静かに評価してくれました。 姉の会社で働く今、あの日の姉の言葉は、自分の強みが「しなやかさ」にあるという気付きと、一人の社会人として認めてもらえた自信につながったのだと実感しています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








