子どもの視点が企画を変える
そこへ遅れてA山が出社し、託児スペースに顔を出しました。
「休日出勤に子どもを連れてくるのは非常識じゃないか?」「仕事が遅れてるのに、甘いよな」と、遅刻してきたことは棚に上げた発言が続きました。
すると社長が静かに口を開きました。「今回の企画書は、働く親とその子ども向けの商品開発よ。子どもの率直な意見が欲しかったところ。むしろ助かるわ」。娘は興味津々で試作品を手に取り、「これ好き! パパのお仕事のお手伝いができそう」と話しました。
私は、「子どもの目線の高さに合わせた仕様や、親子で一緒に使える機能があれば、家事がコミュニケーションの時間にもなると思います」と、自分の経験を踏まえて意見を述べました。
社長は「大人だけでは出てこない発想ね。実生活を知る人の意見は本当に貴重だわ」と、企画の方向性を大きく見直すことに。
夕方になると、「子どもを使って社長の評価を上げようとしてるんじゃないのか?」とA山が私に詰め寄りました。私は「そんなつもりはないよ。実際のお客さまの視点を踏まえて意見を出しただけだ。娘を利用したこともない」と、落ち着いて答えました。
新事業部の立ち上げへ
その後、改良された商品は予想以上の売れ行きを見せ、「利用者の気持ちがわかる企画」と社内外から評価されました。これをきっかけに社長は「家族支援事業部」を新設。私はその部長に任命されました。託児スペースも改善され、保育士が常駐する体制が整い、働く親にとってより利用しやすい環境へと変わっていきました。
1年後、事業部は会社の主力部門の1つへと成長。私は役員に昇進しました。私は、「会社のためにも、同じように働く親たちのためにも、より良い環境づくりを続けていきます」と誓うと、社長は静かにうなずき、「あなたたち親子の姿を見て、私も働き方を見直すきっかけになった。会社にとって大切な気付きをくれたわ」と、感謝の言葉を伝えてくれました。
一方A山は、人への皮肉や否定的な態度が改まらず、気付けば人間関係が悪化。組織の変化についていけず、別部署へ異動することになりました。
まとめ
シングルで育児と仕事を両立するのは簡単ではありません。しかし、実生活に根ざした視点は働く親向けの商品開発に大いに役立ったようでよかったですね。今後も「誰もが働きやすい組織づくり」を広げていってほしいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








