
小さいころに両親を事故で亡くした私は、姉に育てられてきました。姉は学生のころから働き始め、生活の中心をほとんど私に置いてくれていた人です。私は社会人になってからようやく安定した職に就き、姉に安心してもらえるよう努力してきました。そんなある日、長く付き合っているパートナーのA子さんから「一度、私の両親と会ってほしい」と言われ、姉を伴って両家の顔合わせをすることになったのです。
★関連記事:「子連れ出勤なんて非常識」と責める同期…シングルの私が休日出勤で娘を連れて行くと女社長が
姉への報告と初顔合わせの日
当日、料亭の前で緊張している私に、姉は「大丈夫。普段通りでいればいいよ」と微笑んでくれました。そのときA子さんから「少し遅れるので、先に入っていてください」と連絡が入り、私たちは中に入ることにしました。
席に通されると、A子さんの両親がすでに着席していました。あいさつを交わした直後、ご両親は姉に向かってこう尋ねました。
「お姉さんは中学を卒業してすぐ働き始めたと聞きましたが、本当ですか? 今はフリーランスと伺いましたが、不安定なのでは?」
質問自体は悪意のあるものではなかったのかもしれません。しかし、背景を知らないまま「安定していないのでは」という見方をされたことに、私は胸がざわつきました。姉は私を育てるために懸命に働いてきただけなのに、その努力を知らずに評価されてしまうことが悔しくて、私は席を立ってしまいました。
外に出ると、姉は慌てて追いかけて来て、「気にしなくていいよ」とやさしく言ってくれました。そこへ遅れて到着したA子さんが「何かあったの?」と心配そうに声をかけてくれました。
数日後の再会と気付き
数日後、姉はフリーランスとして依頼を受けていた建設会社を訪れました。担当者は「ようやく依頼できる」とうれしそうに迎えましたが、姉から名刺を受け取った瞬間、驚いた表情を浮かべたそうです。
実はその建設会社は、偶然にもA子さんの父親が勤めている会社でした。
顔合わせのとき、姉はプライベートの装いで、自分の本名だけを簡単に名乗っただけでした。しかも、普段の仕事現場とは髪型やメイクを変えていることもあり、落ち着いた照明の料亭では印象が大きく変わって見えたようです。ご両親も姉がどんな職業なのか想像しておらず、結びつかなかったのでしょう。
しかし今回は、明るい会議室で、姉が仕事用の名刺を差し出し、正式に自己紹介をしたことで、
「あのときお会いした方だ」とようやく気付いたのだといいます。A子さんの父親は終始、どこか気まずそうで落ち着かない様子だったそうです。








