私立合格報告と、思わず返したひと言
A子さんは、息子さんの有名私立合格に強いこだわりを持っている様子でした。塾や受験対策にかなり力を入れていることも、近所では知られていました。
春になり、ある朝、門の前で呼び止められ、「息子が有名私立に合格したの!」と、満面の笑みで報告されました。さらに、「これで、どっちの子が上かわかったでしょ?」と言われ、私は思わず苦笑してしまいました。
その場で、静かに「それだけ準備されたなら、成果が出てよかったですね」とだけ返すと、A子さんは一瞬言葉に詰まったようでした。
偶然知ってしまった“裏側”
実は数カ月前、私はある出来事に気付いていました。夫がネットで購入した中古の腕時計が、以前、A子さんの夫・C也さんが大切にしていたものと、どこか似ているように感じたのです。幼稚園の行事で一度その時計のデザインを褒めたことがあり、特徴的だったため印象に残っていました。
ちょうどそのころ、A子さんが受験に向けて何かと出費が増えている様子だったこともあり、私は「気のせいだろうか」と思いつつも、後日C也さんにそれとなく話を振ってみました。
すると、詳しい経緯まではわからないものの、本人の認識とは異なる形で、いくつかの私物が手元を離れていたことがわかったそうです。腕時計のほかにも、万年筆や衣類などが含まれていたと聞きました。
家庭内のやりとりについて私が知る立場ではありませんが、その出来事をきっかけに、夫婦関係は次第に難しい状況になっていったようです。
子どもの気持ちを最優先にした選択
騒動の後、わが家の周囲は驚くほど静かになりました。娘は小学校に進学し、B太くんも同じ公立小学校に通っています。C也さんが息子さんの気持ちを聞いたところ、「友だちと一緒の学校がいい」と話したそうです。
その話を聞き、私は改めて思いました。子どもの価値は、学歴や親の見栄で決まるものではありません。大人の承認欲求ではなく、子ども自身の気持ちを尊重することが、何より大切なのだと。
A子さんの状況を思うと、気の毒な面もありますが、これまでの行動が結果につながった部分も否定できません。いつか自分の在り方を見つめ直し、家族それぞれが穏やかな関係を築ける日が来ることを、心から願っています。
--------------
子どものためと言いながら、実は自分の見栄を優先してしまう――そんな行動が、家族や周囲との信頼関係を崩してしまうこともあります。子どもがのびのびと成長できる環境をつくるためにも、大人自身が誠実で思いやりある姿勢を忘れずにいたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








