遊びの延長のようなものなのに

息子が4歳のときのことです。ある日、家の中で「お父さんの顔に軽くビンタをする」という遊びを、たった一度だけしたことがありました。もちろん本気のビンタではなく、幼い子どもが楽しそうにやる“遊び”の延長のようなもので、遠くから見ていても痛そうには見えないものでした。
息子はニコニコしながら、ジャンプして「えい!」と声を上げながら、ペチペチと軽く夫の頬をたたいていました。すると突然、夫が息子の頬を平手打ちにしたのです。
あまりの出来事に、息子は驚いて大泣きしました。私はその瞬間、怒りで体が震えるほど動揺し、信じられない思いでいっぱいでした。
「子どもに手をあげるなんて、最低だよ」と私が言うと、夫は「俺もやられてたじゃん」と返してきました。でも、その強さのレベルも意味合いもまるで違います。そもそも子どもに対して、ダメなことは言葉で伝えるべきだと思いました。
その日までは、夫のことをそれなりに信頼していたし好きだった部分もたしかにありました。でも、この出来事をきっかけに、心の中で何かが決定的に変わってしまいました。
「やっぱり私にとって一番大切なのは息子なんだ」と、改めて実感しました。そして、人はこんなにも一瞬で誰かを軽蔑できるんだということも知りました。
▼児童相談所全国共通ダイヤル
育児や子育てに悩んだときなどの相談窓口です。全国共通ダイヤル「189」に電話をかけると、発信した電話の市内局番等から当該地域を特定し、管轄する児童相談所に電話が転送されます。子どもが虐待されているかもと思ったとき、自分の子育てがつらくて子どもにあたってしまうときなどに、専門家に相談することができます。
電話番号:189(いちはやく)
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今回の出来事は、私の中にあった「家族」というかたちを大きく揺るがしました。夫はたしかに家族であり、生活を共にしてきたパートナーです。でも、心のどこかで「血のつながりがない他人なんだ」と冷静に距離を感じてしまったのも事実です。それと同時に、「私にとって一番大切なのは息子」だという思いを、はっきりと再確認するきっかけにもなりました。子どもを守れるのは母親である私しかいないという強い覚悟が生まれ、今ではその思いが私の支えにもなっています。
著者:内藤めぐ/30代女性・パート








