失った取引と、新たな信頼
結果として、私たちの工場はその取引先との契約を失いました。B山部長は別の下請け工場と契約し、効率とコストを優先する方針を取ったと聞いています。
一方で、私たちは別のメーカーと新たな取引を開始しました。初回から大きな生産量を求められましたが、A子さんは冷静に意見を述べました。
「最初は少量生産で、品質を確認しながら進めるべきだと思います」
私はその考えを支持し、取引先に丁寧に説明しました。すると相手は、その姿勢を評価し、むしろ信頼を示してくれたのです。
効率よりも品質と誠実さを選ぶ姿勢が、少しずつ信頼につながっていくのを実感しました。
数字だけを追った結果
半年後、B山部長が関与していた下請け工場で、大規模な不良が発生し、製品回収に至ったという話が伝わってきました。設備トラブルを抱えたまま稼働を続けた判断が、結果的に大きな問題を招いたようです。
その後、私は先方の経営層から説明の場に呼ばれました。現場の判断を軽視した体制そのものに問題があったことが認められ、体制の見直しが進められていると聞きました。
私はそこで、誰かが勝った負けたという話ではなく、価値観の違いが結果を分けたのだと、改めて感じました。その後、私たちの工場は新旧の取引先と、着実に信頼関係を積み重ねています。
まとめ
数字だけを追い、目先の効率を優先すれば、一時的には成果が出ることもあるのかもしれません。しかし、現場で実際に製品と向き合い、違和感に気づき、声を上げる人の判断を軽視すれば、いずれ無理は表面化します。
あのときラインを止めた判断は、決してラクな選択ではありませんでした。それでも、現場の声を信じ、品質と責任を優先したことで、結果的に信頼を失わずに済み、新たなつながりを築くことができました。
遠回りに見える判断でも、誠実に積み重ねた対応は、必ず人と組織を守ってくれる。私は今も、あの経験を通して得たその確信を、日々の仕事の指針として大切にしています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








