
かつて私は、業界内で高く評価されていたシステムエンジニアでした。現在は縁あって、小さな町工場で技術担当として働いています。手作業中心の現場にITを取り入れ、無理のない効率化を進めることが私の役目です。派手な肩書きはありませんが、現場に根ざした改善こそが、今の私の仕事だと思っています。
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歓迎の席で突きつけられた無理難題
働き始めて間もないころ、ささやかな歓迎会を開いていただきました。私は若き社長のC美さんに「こちらで働ける機会をいただき、本当にありがとうございます」と感謝を伝えました。C美さんは少し照れながらも「父から工場を継ぎましたが、なかなか思うようにいかなくて。人手も足りず、厳しい状況なんです」と話してくれました。
そのとき、取引先のA山氏が現れました。そして突然、納期を翌朝までに前倒ししてほしいと要請してきたのです。
「難しいなら、契約終了も考えます」
現場の状況から見ても、従来のやり方では到底間に合いません。社員たちの表情は重く、C美さんも「何とか頑張ります」と口にしながら、明らかに追い込まれていました。その光景を見て、私は決意しました。
私は静かに「工程の一部を自動化すれば、対応できる可能性があります」と提案しました。これまでの経験をもとに、既存設備を生かしながら簡易的な制御プログラムを組み直す案を説明しました。大掛かりな投資は不要です。今ある機械を「賢く使う」だけでした。
半信半疑の空気の中、私はすぐに作業に取りかかりました。数時間後、試験運転は成功。作業効率は大幅に改善されました。社員の一人が思わずつぶやきました。
「こんなやり方があったなんて……」
徹夜の覚悟だった現場に、確かな手応えが生まれた瞬間でした。
「無理な取引」は続けないという選択
翌朝、A山氏が確認に訪れました。予定通り製品が整っているのを見て、表情が変わりました。私たちは冷静に話し合い、今後の取引条件について再検討を申し入れました。一方的な条件変更が続く関係は、長くは続きません。
最終的に双方合意のもとで取引は終了。感情的な対立ではなく、将来を見据えた判断でした。現場の士気はむしろ上がりました。
「技術を尊重してくれる相手と仕事をしたい」
その思いが共有されたのです。








